研究課題/領域番号 |
20K11918
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
舟橋 健司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00303694)
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研究分担者 |
谷田 公二 近畿大学, 理工学部, 講師 (80803931)
水野 慎士 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (20314099)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己主体感 / 身体所有感 / 操作遅延 |
研究実績の概要 |
本研究では、遅延を伴う実験における知見から、操作系における適切な遅延が道具の特性把握の助けとなり拡大的な身体所有感に結び付くという仮説を立て、操作成績を向上させることを目的にこの仮説を詳細に検証している。予備実験により検証したところ、適切な遅延が拡大的な身体所有感を与え、操作成績を向上させることが示唆されている。 初年度に続き、マジックハンドを想定した実験において追試験を行ったところ、予備実験同様に適切な遅延が操作成績を向上させることが示唆された。しかし、予備実験結果の有意差に対して、初年度および当該年度の実験結果での有意差は小さなもので合った。初年度は実験における誤差であると推認していたが、当該年度の追実験から、予備実験の方が「誤差」だった可能性が出てきた。 そこで実験環境、実験システムを改めて精査した。初年度、当該年度で利用した実験システムは、予備実験のシステムから、タスクや環境を引き継ぎつつ、臨場感を高めるなどの改良を行なっていた。すなわち、全く同一ではなかった。しかし実験タスクは同等であり同様の結果が得られると期待していた。ところが複数回の追試ともやや期待に沿わない結果であった。実験タスクを精査したところ、被験者の操作動作範囲の制限がやや異なっていた。実はこの点は、より臨場感が高まることでさらに有意な結果を期待したものであった。そこでこの制限を同等にした上でさらに実験を行ったところ、予備実験に近しい有意差を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験システム自体の整備は順調に進展している。追実験も、各実験の結果を考慮しつつ取り組んでいるところである。当初より期待していた遅延に対する成績向上に対して、実験タスクがわずかに難しくなるだけで好影響が期待できなくなることも示唆された。新たな方向性も見えてきたところであるが、コロナ禍のために被験者集めに苦労しており、そのため実験タスクの難易度を細かく変化させながら多くの実験を行うことがままならない。実験の実施に若干の遅れを感じている。また、国際会議なども基本的にオンライン実施となり、情報収集や意見聴取の機会が制限されていまい、実験タスクの難易度調整などが実験実施者の経験的な主観に偏ってしまっていると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度には難易度を変化させた実験も行ったが、実は、遅延の操作成績への好影響は、比較的難易度の低い、あるいは非常に限定的な環境においてのみ確認できるのかもしれない。すると、わずかな遅延により「手足のような道具操作」を実現することは難しいだろう。しかし、一般には悪影響であると捉えられている操作遅延(レイテンシ)も、場合によっては操作成績の向上につながることが示唆されているのは確かであり、このこと自体は非常に興味深いことである。そこでこの現象の発現する要因を明らかにすることを調査の主目標としたい。実験においてパラメータの選択肢が増えるため、より多人数の被験者に依頼する必要がある。なお、特定の被験者に多数回の試行を行ってもらうことも考えられるが、疲労による変動や経験による成績の変化などから慎重に検討する必要がある。オンライン実施の国際会議への出席、発表は既に行っているところであるが、やはり自由な議論が同等に可能であるとは言い難い。今後の対面実施に期待するとともに、様々なチャネルでの意見収集も検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際会議への出席(出張)が取りやめとなった。 次年度に同等の国際会議への出席を予定している。
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