本研究では、遅延を伴う実験における知見から、操作系における適切な遅延が道具の特性把握の助けとなり拡大的な身体所有感に結び付くという仮説を立て、操作成績を向上させることを目的にこの仮説を詳細に検証している。予備実験により検証したところ、適切な遅延が拡大的な身体所有感を与え、操作成績を向上させることが示唆されている。 この当初の研究期間の3年間では、まず、操作タスクの難易度を明示的に大幅に変えることで成績向上の変化を調査した。また実際に操作支援を行うことで成績向上の変化を調査した。しかし、変化があることは示唆されたが、明確な関連性を見出すには至らなかった。続いて、操作動作範囲を制限して難易度を質的に繊細に変えることで成績向上の変化を調査した。すると期待する有意差を確認することができた。さらに、実際の手の移動量に対する画面上での手の移動量を小さくする(細かな操作が容易になる?)ことで成績向上の変化を調査した。操作系に、適切にわずかな遅延を加えることで、操作成績を向上させ得ることが強く示唆された。 延長期間においては、学会や研究会にて3年間の研究成果を発表するとともに、本仮説とその結果について様々な意見をもらうことができた。当初は懐疑的な意見も少なくなかったが、試行数や試行パターンを増やすことで、結果の信頼性も高まり、レイテンシーが好影響を与える場合もあるかもしれないと、好意的な意見をえられるようになった。
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