研究課題/領域番号 |
20K11919
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
水科 晴樹 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (20389224)
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研究分担者 |
陶山 史朗 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70457331)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動視差 / 奥行き知覚 / 両眼立体視 / 垂直視差 / 両眼融合 |
研究実績の概要 |
従来の二眼式3Dディスプレイにおいては,奥行き知覚の違和感や視覚疲労を引き起こすこと,左右眼の視力差が大きい不同視の場合は奥行き知覚が困難になるなどの問題がある.調節と輻輳の矛盾がその原因のひとつであるというのが通説となっているが,本研究では二眼式3Dディスプレイでは運動視差が再現されていない点もひとつの要因ではないかと考えた. そこで本研究では,運動視差をひとつの奥行き知覚手がかりとしてだけでなく,両眼視差と協調して機能し,両眼立体視を促進する効果を持つものとして考える.令和2年度は,まず両眼視差に運動視差を付加することの有効性を検証した. 両眼視差に運動視差を付加することによる立体視の改善効果の評価においては,まず,両眼視差と運動視差を同時に呈示可能な実験系を構築し,両眼立体視を困難にする状況として左右眼に呈示する像に垂直方向のずれ(垂直変位視差)がある場合と左右像の大きさが異なる場合を設定した.そこに運動視差を付加することで,奥行き知覚および両眼融合のしやすさに改善が見られるかどうかを評価した. 1.両眼視差と運動視差を同時に呈示可能な実験系を構築し,正常に機能することを確認した. 2.垂直変位視差がある場合には,垂直変位視差の増大とともに奥行き知覚が劣化するが,両眼視差と一致した奥行きに対応する運動視差を付加することで,劣化が改善されることが明らかになった.一方で,両眼融合のしやすさについては,運動視差の付加による改善効果は見られなかった. 3.左右眼に呈示する像に大きさの差があると,両眼融合が困難となり奥行き知覚が劣化するが,両眼視差と一致した奥行きに対応する運動視差を付加することで,奥行き知覚の劣化が改善することが明らかになった. 以上より,両眼視差に運動視差を付加することで,両眼視差により奥行き知覚が得にくい状況でも,問題なく奥行きが知覚できることを確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に示したように,各研究項目において,申請書に記載したものとほぼ同等な進捗状況となっている.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では,研究は計画通りに進んでいる.令和3年度以降も,申請書の記載に沿って進行する予定であり,令和2年度の研究で明らかになった運動視差と両眼視差の協調効果の結果を受けて,以下の通り推進する. 1.運動視差の欠如によって生じる立体形状の歪みと空間知覚の違和感の評価実験を,令和3年度末までを目処に実施する.3D表示によって生じる立体形状知覚の歪みとして「書き割り効果」があるが,これが運動視差により改善されること,また,その限界について明らかにする. 2.運動視差の持つどのような要素が立体視の改善に有効であるかの評価を行う.本研究では,運動視差刺激の「連続性」と「運動方向転換の有無」の2点に着目し,心理物理実験により両眼融合のしやすさ及び奥行き知覚の評価を行う.実験設備については,令和3年度は研究項目1の実験と時期が重複するため(研究協力者は重複しない),新たな実験系を構築する予定である.これらを令和4年度前期末までに順次実施予定である. 3.ここまでの評価実験で得られた知見を基に,従来型の3Dディスプレイに運動視差を付加するための実装可能な技術について検討・評価を行う.運動視差を提示可能な方式として,頭部追跡システム,DFD表示,アーク3D表示を候補とするが,どの方式が有望であるかは,ここまでの評価実験の結果から見通しを付ける.これにより,運動視差をどのような方法で付加すべきか,実装可能な方法を模索する.これを最終年度の令和4年度に実施予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,旅費として計上していた額が,コロナ禍による国際会議,国内学会・研究会のオンライン開催への移行に伴い支出されないこととなり,次年度使用額が発生した. 次年度はコロナ禍の収束および学会のハイブリッド開催の普及などにより,旅費の一定額の支出が見込まれ,さらに新規に構築する実験系の部材調達およびその充実のために,次年度使用額を充当することを計画している.
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