研究課題/領域番号 |
20K11924
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
内田 恭敬 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (80134823)
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研究分担者 |
本間 信生 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (20252017)
大久保 英一 帝京短期大学, 帝京短期大学, 准教授 (30529722)
舩山 朋子 帝京科学大学, 医療科学部, 准教授 (20460389)
堀 和芳 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (60850302)
浅野 泰仁 東洋大学, 情報連携学部, 教授 (20361157)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 下肢生体情報 / 血流量 / 日常生活 / 機械学習 / 聴音測定 / 周波数スペクトル分析 / インソールセンサ |
研究実績の概要 |
足裏聴音、血流速度および透析前後の歩行測定を実験室と実際の医療現場である透析室で行った。その結果、透析患者の方では血液の流速が遅いため実験室と異なり現場での雑音の影響が大きくスペクトログラムやDFTによる分析が困難となることが多く観察された。透析前後で体調が大きく変化すると予測し測定を行ったが、雑音を考慮して測定場所やタイミングを検討する必要があることが分かった。歩行に関しても高齢の被験者の場合歩く方向が予測以上に大きくずれることが観測され、センサ配置の改良が必要であることが分かった。血流の速度の測定では、長時間測定により透析中の時間変化を反映するデータが得ることができた。しかし、被験者の体調により大きく変化するので、測定時間を減らすこと、測定のタイミングを工夫することの重要性が明らかとなった。機能は限られるがレーザドップラー流速センサチップの組み込み方法も検討した。 足裏からの脈波測定に関しては、市販のウェアラブル測定キットを利用することで携帯端末にリアルタイムデータを得られ、その時の生データも得られるのでDFTを用いたスペクトル分析が可能であることを確認できた。被験者の体調分析結果との対応についての分析を行い、交感神経か副交感神経の活性に対応する分析結果も本装置により得られることも確認できた。そしてこのセンサをインソールに組み込む方法と位置についても検討を行いデータ分析中である。さらにウェアラブルキットのアップグレード版を用いることで、加速度データ、血中酸素飽和濃度の生データを得ることができデータ解析時に応用できることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大の問題点は新型コロナウィルスの影響で体表面への接触を伴う調査実施が難しく、計画的なデータ収集が出来ていないことである。 足裏聴音では、血行不良を起こしている場合に聞こえる音が小さくスペクトル分析時にノイズとの区別が難しい。それに加えて病院内での測定では、透析準備時の会話や機械の音が多く入り込んでしまい分析がさらに難しくなった。足底(足裏)母趾の血流速度を、レーザドップラー装置を用いて長時間測定を行い、透析中の状態に対応したデータが得られることは確認した。しかし透析中の長時間測定では被験者の寝返り等の体位変化で足部が頻繁に動きノイズやセンサ接続ケーブルの断線も生じた。改良の必要性が明らかになった。 歩行分析では、特に透析を受けている高齢者の場合、医療従事者から得た情報をもとに改良したセンサ配置でも十分な歩行データを得ることが難しく変更が必要となった。歩行中の圧力変化測定のために購入予定であったインソールセンサは、予定していたメーカーより安い金額で高性能のスマートインソールを他のメーカーから購入できる方向になり現在細かい仕様を検討依頼中である。 タブレット端末でリアルタイムに計測結果を表示でき、かつ生データが保存できるウェアラブル健康管理キット端末を購入し、足裏等に装着して脈拍や脈波の測定が可能であること、センサからの未処理のCSVデータをスペクトル解析して、交感神経と副交感神経のどちらが優位に働いているかのデータ収集を行っている。さらにこの光学式センサをインソール内に組み込むためのテストも行っている。 多軸触覚センサの使用については聴音の測定結果から類推し現状では停止している。 体温の変化も体調変化に大きく影響を与えることも判明したので、現有のキットを用いてデータ分析を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
生活雑音等の影響を避けるための聴音データ分析方法の改良、血流速測定を行うタイミングと測定時間の最適化を得られたデータから分析する。雑音削減のためスペクトル分析を詳細に行いフィルタによりどこまで除去できるかを、機械学習を併用して検討する。測定場所についても下肢のいくつかの点で測定を行い、測定位置の変化を調べることで改善を行う。多軸触覚センサについては聴音の測定結果から類推し、生活ノイズの影響の大きさを考慮して現状では停止しているが上記の結果をもとに使用方法について検討する。 レーザドップラーによる血流速度測定分析のためには10分以上の測定時間が必要であるので、被験者への負担を増やさないための測定時間とタイミングの最適化の検討を行う。長時間測定では被験者の透析中の容態の変化により、足の移動が頻繁に起こることに起因するノイズやセンサ接続ケーブルの断線も生じた。センサの設置場所の検討を行いこれらの点の改良を行う。 被験者の発言から、体温変化を捉えることで体調変化を予測する研究を計画しており、現有のキットをセットアップしてデータ分析を開始した。この結果をもとにウェアラブル健康管理キットの最新型モデルを購入して、脈拍、血中酸素飽和濃度および体温の長時間データ取得を行い、長時間データから体調変化を示すタイミングの検出を行う。 インソール圧力センサに関しても現在別途新たなメーカーと検討しており、改良を加えた我々の歩行解析システムと組み合わせて体調変化の検出法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行には体表面にセンサを装着するなど人との接触が多い研究であることが大きく影響した。新型コロナウィルスの影響で研究者が実際に集まり実験及びデータ解析の方法についての事前の準備や議論を行うことがほとんどできなかったことが大きい。また病院での被験者へのデータ収集は感染防止のため、度重なる延期を生じるなどより厳しい状態で、1度しか行うことができず、データ収集と分析が十分できない。病院での測定では患者の方の協力が不可欠であり、負担軽減のため透析のために来院され、透析前後に測定を行う必要があるため業務にともなう病院スタッフの会話や透析室の機器からの音の影響を避けるのが難しく、これらの影響を避ける手法の開発が必要不可欠となった。 歩行中の圧力変化測定のために予定していたインソールセンサの変更も生じ、これに対する対応も必要になった。これらを踏まえて、被験者の状態をより正確にとらえるためにセンサの個数の最適化やそれに伴うシステムの変更と新たなインソールセンサの準備と検証を行うために使用額の変更が生じた。
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