研究課題/領域番号 |
20K11929
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大森 信行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 客員研究員 (20506133)
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研究分担者 |
遠藤 博史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ付 (20356603)
近井 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60758431)
井野 秀一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 副研究部門長 (70250511)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 介護食品 / 咽頭 / 嚥下 / 振動 |
研究実績の概要 |
食形態の制限において、それまで普通食で得られてきた感覚、体験の喪失を課題と捉えて、介護食であっても普通食と同様の感覚、体験を得る方法を研究してきた。本研究は、嚥下において聴覚や触覚を通して得られる咽頭の食塊通過感覚を実現し、楽しさや美味しさといった食のQOL向上や、リハビリや摂食意欲の改善を目指している. 嚥下機能の改善のために,口腔や頸部において,冷熱刺激,電気刺激を与えることで,嚥下機能を改善される試みが行われているが,咽頭における食塊通過感覚を発生させ,食感向上を目指す研究はこれまで行われてこなかった. そこで本研究では,振動刺激による食塊通過感覚の生成を目指して,食感向上のために必要な振動特性と実現方法を検討する. 本年度は食品の咽頭通過感覚を改善するための頸部振動刺激方法とその影響を中心に検討した.その結果,頸部刺激により咽頭受容器で振動を知覚できること,頸部振動によって顕著な不快感の増加は発生しないことが確認された.機器仕様に基づく検討からは,このための頚部における振動(100Hz程度の周波数および数十m/s^2程度の振幅)は装着可能なサイズの振動子によって実現が見込まれる.またこれらの振動を発生するための機器構成についても概ね基本的な検討が完了した. 予備的な実験として研究協力者数名で頸部に保持した振動子により振動刺激を加えたところ,かゆみや痛み,刺激部位の発赤,不快感は発生しなかった.また,発生した振動を頸部で知覚できることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頸部振動刺激に利用される振動の周波数や振幅を検討し,実験のための振動子,振動発生方法等の機器の基礎的な検討が概ね完了しており,概ね順調に進行している.他方で,この方法による振動刺激による咽頭通過感覚への基礎的な影響は検討にとどまっており,研究協力者による影響を評価する実験はCOVID19の影響もあり,実現できていない部分があるため,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
頸部振動刺激によって食塊咽頭通過感覚を発生する方法を確立するためには,刺激から感覚知覚までのメカニズムの解明と,モデル作成が必要である.このためには研究協力者による振動刺激の感覚の評価が必須であるため,食品衛生等の専門家の助言を受けながら,感染の予防に十分に配慮して実験の計画を作成し実施することで検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、振動刺激による咽頭通過感覚,味や食感の知覚への影響について,感染予防の観点から研究協力者の参加する実験による予備検討ができなかったことが挙げられる.主に実験に必要な機材のための使用額が予定よりも減少した. 今後は振動子の振動強度や周波数,装着位置による咽頭通過感覚,味や食感の知覚への影響について,その刺激と感覚間のモデルについて検討を進める.この過程では実験による検討を行う予定ため、次年度使用額について,これらの実験で必要とされる機器等の調達、実験系の構築の経費に充てることとしたい。
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