研究課題/領域番号 |
20K11944
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
根本 充貴 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (10451808)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンピュータ検出支援 / 病変領域教師ラベル / U-Net / 異常検知 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①半教師あり機械学習の枠組みにカルテデータの病変情報を融合し、病変領域教師ラベルのない医用画像上の教師ラベルを高精度に自動推定する手法を確立すること、また②推定教師ラベルを活用した効果的学習による病変検出支援システムの開発を行うことである。今年度は、①に関する検討を多角的に行った。 まず、極めて荒い病変領域教師データである病変位置座標と病変長径のみから、セマンティックセグメンテーションに優れたU-Netを用いて病変領域教師ラベルを推定する方法に関する検討を行った。 R2年度は病変のサイズごとに事前学習した複数U-Netの選択利用について検討した。R3年度は選択したU-Netが出力する病変領域確率マップから領域を決定する際の閾値を病変長径から適用的に設定する手法を検討した。胸部CT像上の肺結節領域データを用いた検証実験の結果、旧手法に比べて手入力の病変領域教師データとのDice係数が3%程度向上した。この精度向上は5%のもと有意水準で統計的に有意であることも分かった。 また別視点での病変領域推定の検討として、病変データを学習せずに正常データのみを教師無し学習することで得られる画素異常検知処理を用いた病変画素の強調・検出についても実験を行った。本検討は、病変領域内の画素を学習することなく病変領域の画素を検知する画素識別器を得るものである。病変教師データが不完全という本研究の問題設定に親和性のあるアプローチと考え、検討を行った。 全身FDG-PET/CT像の原発性・転移性がん転移データを用いた検証実験から、異常画素検出処理を施すことが病変画素の強調・検出に有用であることが分かった。とりわけ、多段階の画素異常検知カスケードにより、異常検知の欠点である低特異度性を補う効果があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
U-Netを用いた病変領域教師ラベル推定の検討結果については、R3年度中の対外発表はできなかったものの、「研究実績の概要」にも示した通り研究の知見は集まりつつある。この項目のみに注目すれば当初の計画からはやや遅れているが、概要に示した②推定教師ラベルを活用した効果的学習による病変検出支援システムの開発にすぐにでも着手できる状態であり、十分挽回は可能である。 また画素の異常検知処理に関しては、当初の計画にはなかったものの有用性を考慮して検討を行っている項目である。R3年度に1件の国際会議での発表をはじめとした複数の学会発表を行い、貴重な工学的知見を得ることができた。加えて、画素の異常検知を用いたFDG-PET/CT画像上の病変検出アルゴリズムに関する原著論文を国際誌に投稿中である。 また、これまでの研究の知見から核医学分野における深層学習適用研究に関するサーベイ論文執筆を行った。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は、R3年度に得られた病変領域推定方法に関する検討結果をもとに、日本生体医工学会シンポジウム他で体外発表する予定である。 それと同時に、推定した病変領域ラベルを用いた病変検出支援システムの開発に関する検討についても並列して検討を行う。これらの検討には、既に数百例の規模で収集済みの胸部CT画像データならびに頭部MRアンギオグラフィデータを用いる。 病変検出支援システム開発の検討から病変領域抽出精度のさらなる改善が必要であると判断できる場合には、病変領域推定方法の再検討も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
生じた理由:既にあった研究設備を転用することができたため物品の購入費用が抑えられた.また、コロナ渦の影響により国際会議が軒並みオンライン開催となり旅費の利用機会が限定されていた。 使用計画:データ解析用のGPUユニット単体ならびにGPU搭載コンピュータ、実験データ保存用のオンラインストレージの購入のほか、国内学会・国際会議の旅費・参加費などに充てる予定である。
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