津波高の即時予測において,予め津波シミュレーションを多数のシナリオについて計算しデータベースを用いた予測が行われている.従来の最適なシナリオを データベースから検索して津波予測をする場合,シミュレーションで仮定しているシナリオの仮定は実際のシナリオと乖離してしまう.そこで本研究課題では, シナリオ混合による広範囲の津波高即時予測の精緻化を機械学習によって行い,徳島県での津波予測システムのプロトタイプに組み込みを目指す. 大規模な津波災害時の緊急対応では,救助活動のために陸地の流下深度の情報が必要である.そこで本年度では,回帰と機械学習を用いて津波の流下深度分布をリアルタイムで予測することを目的とした.南海トラフの地震による津波3480件の学習データを数値シミュレーションにより構築した.当初はk-means法を用いてほぼ同じ流下深さのエリアを判別し,クラスター化されたエリアの数を18,クラスター内の流水深データの標準偏差は平均で0.46mとして予測できた.また目的変数はクラスター化した領域における流水深の平均値と標準偏差とし,説明変数はDONET観測所の海底観測点における水圧の最大偏差とした.これらのデータセットと共役勾配法を用いて,べき乗の重回帰式として予測モデルを構築した.さらに機械学習手法の一つである多層パーセプトロンを用いて,予測性能を評価した.この結果,両手法とも内閣府の11の地震シナリオをテストして算出した津波の流下深度を正確に予測を可能にした.他手法としても昨今提案されている大規模な津波予測システムに加え,大規模地震や津波災害時の不測の事態に備えるためには,本研究で用いたようなロバストで計算負荷の軽い予測手法が重要になると考えられる.
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