研究課題/領域番号 |
20K11951
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
水谷 友彦 静岡大学, 工学部, 講師 (00553984)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミクセル分解 / 非負行列分解 / クラスタリング |
研究実績の概要 |
線形混合モデルを基盤としたミクセル分解手法の開発を行った.線形混合モデルを仮定するとミクセル分解は非負行列分解(NMF)に帰着できる.NMFに対して,これまでに幾つかの手法が提案されているが,Bittorfらによって提案された線形計画に基づく手法は優れたノイズ頑強性を有することが知られている.一方で,この手法ではあらかじめ入力行列に含まれているノイズの量を推定し,それを入力データとして与える必要がある.入力行列に含まれているノイズの量を推定することは容易ではない.そのことが線形計画に基づく手法を実際に利用する際の障害となっている.そこで,ノイズの量を入力データとして与えなくても動作するようにアルゴリズムの改良を行い,その理論性能を解析した.その結果,改良したアルゴリズムは元のアルゴリズムと同程度のノイズ頑強性を有していることが分かった.現在,この結果を論文にまとめている. グラフ表現を基盤としたミクセル分解手法の性能を実験的に調べた.ミクセル分解を精度良く実行することは困難が伴うことが多いので,まずはより簡単な問題を考察した.具体的には興味のある端成分の存在領域の一部が判明しているとき,その端成分の存在領域を求めるという問題を考えた.この問題に対してページランクを用いた手法を開発し,実験的に性能を調査した.その結果,画像の特徴をグラフでうまく表現できると端成分の存在領域を精度良く計算できることが分かった. スペクトラル・クラスタリングの理論解析について論文がOptimization Letters誌に受理された.また,凸計画に基づくスペクトラル・クラスタリングの論文がMachine Learning誌に受理された.これらの研究結果は高精度ミクセル分解手法の開発を目指す上での基盤となるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は線形混合モデルを基盤としたミクセル分解手法を開発することが目標であった.当初は逐次射影法の改良について重点的に研究を行うつもりであったが,線形計画に基づく手法に関して進展があったために,こちらの手法の研究に注力した.実際,ノイズの量を入力データとして与えなくても動作するアルゴリズムの設計に成功した.また,グラフ表現を基盤としたミクセル分解手法に関する手法に関しては実験的な示唆が得られた.そのため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
グラフ表現を基盤とするミクセル分解手法の開発を推進する.具体的にはページランクを用いる手法の精度改善を目指す.また,分数計画法に基づく手法の有効性についても調査する.線形混合モデルを基盤とするミクセル分解手法として線形計画に基づく手法の改良を行ったが,まだ,実データへの適用は未着手のままである.そのため,改良した手法を大規模実データに適用できるように効率的な計算手法の開発を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大に伴い,海外出張が中止となったため予算計画に変更が生じた.海外旅費に相当する予算は計算機環境の整備に充てる.
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