大震災などの災害時において,地震後に発生する火災等の2次災害による被害を最小限に抑えることは極めて重要である.これまで,災害時の支援に関する研究が行われているが,地震のみを想定した避難誘導支援など,単一の災害に特化したシステムの提案がほとんどである.しかし,現実には地震後の火災発生,建物損壊による通行止め,停電等様々な災害が連鎖的に発生しうる.本研究では,“悪条件下での震災避難行動を支援する研究”で得た自律ロボットによる避難誘導の独自技術を活かし,複合災害を想定した分散人工知能防災システムの設計・開発を行い,2次災害を考慮した安全な避難誘導,避難時の混雑解消などの避難支援を実現する.この研究により,大学キャンパスにおける防災能力の向上を達成し,さらに,システム開発・運用の知見を基に,市町村の公共施設・商業施設における防災システムへの発展・展開を目指す.2022年度は,主に「ロボットの異常検知手法の導入」と「評価実験による提案手法の有効性の検証」に取り組んだ. ・大学キャンパスの建物内で火災が発生した状況を想定し,火災/煙の影響による被害を最小限に抑えるためのロボットベース避難誘導方式の改善・拡張を実施した. ・1台のロボットの故障を想定し,故障状態をロボット群で共有する手法を検討した. ・故障ロボットの作業を別ロボットが代替するロボット連携手法を考案した. ・煙の広がりなど火災による影響と,階段の混雑状況など避難者の移動に伴う影響の双方を考慮した避難誘導について,シミュレーションと実機での検証を行い,提案手法の有効性を確認した. 研究期間全体を通じて,ロボット群を用いた分散人工知能防災システムの開発により,2次災害を考慮した安全な避難誘導,避難時の混雑解消などの避難支援を実現した.
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