研究課題/領域番号 |
20K11961
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
小市 俊悟 南山大学, 理工学部, 准教授 (50513602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 分子ネットワーク / データベース / 最適化手法 |
研究実績の概要 |
当初の計画より研究時間を確保できなかったこともあり,本研究課題のテーマに直接関わる内容で外部に公表するに至った実績はないが,計画に沿って,分子データに対して,どのようなネットワーク構造を与えるかを検討した.分子データにネットワーク構造を与えるには,2分子間の類似度や相違度を定めることが基本となるが,分子の大きさに違いもあるため,公平な比較を行うためには,一種の規格化のような処理が必要であるとの考えに至った.現在は,そのような規格化として,いくつかの具体的な方法を検討中である.また,化学反応は骨格構造も重要ではあるが,反応自体は,分子中の一部の官能基を中心に局所的に進むのが一般的であることから,分子の骨格が共通する場合と,官能基のような末端的部分で共通する場合を区別し,適切な重み付けのような処理を行なった方が良いのではないかという考えに至っている.そのためには,まず,骨格部分と末端的部分を区別する適切な方法を考案する必要があるため,それについても検討中である. 一方,研究期間の後半において機械学習の活用を予定していることから,機械学習,特にその学習プロセスに利用されるような線形計算に基づく最適化技法についても副次的に研究を進めているが,こちらに関して学会発表に至った成果がある.その内容は,最適化したい関数のヘッセ行列について,スペクトル分解と呼ばれる行列の分解方法の一つを適用することで,安定的に最適化を行うことを提案するものである.特に,スペクトル分解に複素積分を活用する部分に新規性があると考える.量子化学計算で得られるデータの分析には,線形計算を積極的に活用していくことが必要であると考えており,この成果はその足掛かりになると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オンライン授業の準備等が必要になったために,当初計画していたよりも教育活動にかける時間が増えたことから,研究活動については計画通りに進んでいないところがある.特に,まとまった時間を確保することが難しかったため,一定の作業時間を確実に要するプログラミングを進めることが難しかった.ただし,研究期間4年間の前半2年間は当初計画でも検討を中心に進めることにしてあったので,2020年度末の時点で公刊物や発表が少ないこと自体は,計画から大きく逸脱するものではない.研究活動に充てることができる時間が減った中でも,研究実績の概要で述べたように,研究を前進させることはできたと考える.2020年度を終えた2021年度は,教育活動に必要な時間は平時に戻りつつあるので,2021年度以降は遅れの解消も含め,計画通りに進められると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の当初計画からは遅れている部分もあるので,それを解消し,さらに,2020年度の研究で検討した方法の実装を進めることで,計画通り分子ネットワークの構築を行なっていく.また,本研究課題の独自性として挙げている,分子ネットワークの構築に分子構造列挙を組み合わせることで,既知の分子のみならず,新規化合物の可能性がある構造を含むネットワークを作成することを推進する.その際も計画通り,量子化学計算ソフトウェアを活用して,新規構造に関するデータの質を担保できるようにし,データベースの質を維持する.
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次年度使用額が生じた理由 |
オンライン授業の準備等が必要になったために,当初計画していたよりも教育活動にかける時間が増えたことから,研究活動にやや遅れが生じたため,2020年度中に使用するのではなく,2021年度以降に適宜使用できるように繰り越した方が助成金の有効な活用方法であると判断したためである.なお,計算機環境を整えるために20万円程度のノートPCを2020年度中に発注したが,納品が遅れ,2020年度中の使用とならなかったという経緯もある.2021年度以降,研究の遅れも取り戻す中で,研究計画にも照らして助成金を適切に活用していく.
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