研究実績の概要 |
進化型多目的最適化において,探索領域を縮約し,探索効率を向上させるアプローチとして,主成分分析(Principal Component Analysis,PCA)を適応的に利用する方法を考案し,その有用性の検証を行った. 提案手法では,非線形性を有する問題においてPCAを効果的に活用するため,探索の停滞度合い,主成分の寄与率といった情報を活用し,探索におけるPCAの活用の有無を適応的に変化させ,どのような問題においてもPCAを活用しない場合と同程度以上の性能を発揮するアルゴリズムの開発に成功した.本手法は,設計変数の次元数が10を超える高次元問題では顕著に優位な結果を示す一方,PCAがあまり効果的に働かない問題においても通常の方法とほぼ同程度の探索性能を示し,汎用的に高い性能を示すことができた. 一方,PCAを利用するアプローチとは全く異なる探索アルゴリズムとして,昨年度から取り組んでいる評価計算負荷の高い問題に特化したベイズ最適化の探索効率を向上させる取り組みについてもアルゴリズムの改良を行った.本アルゴリズムは,局所的な探査と大局的な探索のバランスを陽に扱うメカニズムを組み込むことで探索の役割を明確化し,探索効率の向上を図っている. 改良手法の有用性を検証するため,代表的なテスト問題,実問題の1つである撹拌機設計に関する問題への適用を行った.その結果,対象問題の設計変数の次元数に関わらず改良手法は,従来のベイズ最適化手法にくらべ探索序盤に大きな優位性を示すことができた.また,高次元の問題に対しては,より顕著な優位性を示し,最終的な解の品質においても多くの問題で従来手法を上回る解を導出することができた. また,最適化アルゴリズム以外の研究成果として電気炉製鋼法におけるスクラップ配合問題の最適化や明視野画像における細胞活動の定量化などについて成果を挙げることができた.
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