研究課題/領域番号 |
20K11973
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
川村 正樹 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (60314796)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 情報ハイディング / 電子透かし / 連想記憶モデル / 最適化 / パイロット信号 |
研究実績の概要 |
電子透かしが埋め込まれたステゴ画像に、幾何攻撃や圧縮攻撃などが加えられると、透かし情報が誤って抽出される。本研究の目的は、攻撃に強い電子透かし法を開発することである。ステゴ画像に攻撃が加えられると、透かし情報には誤りが含まれてしまう。攻撃の種類と大きさを推定することができれば、誤りを低減することができる。また、残った誤りをさらに訂正できれば、誤りをもっと減らすことができる。そこで、攻撃を推定する手法として、パイロット信号を埋め込む手法を検討した。また、誤り訂正の方法として、連想記憶モデルを導入した方法に取り組んだ。 パイロット信号を埋め込む手法では、まず、拡大縮小攻撃に限定して、その攻撃の大きさを推定できるかどうかを評価した。攻撃を受けたとしても、パイロット信号が残っている必要がある。そこで、ビットプレーンに埋め込む方法を検討した。また、透かし情報と干渉しないように埋め込む必要がある。そこで、透かし情報とは別のチャネルに埋め込んだ。パイロット信号を格子状に埋め込むことにより、一定の耐性をもたせることができた。この成果は国際会議APSIPAで発表した。 次に、連想記憶モデルを用いた誤り訂正では、ゼロ電子透かし法の枠組みで、性能を評価した。これまでに、画像の特徴情報と透かし情報を相互想起型連想記憶モデルで対応付けて記憶し、画像の特徴情報から透かし情報を連想させることに成功している。しかし、画像が劣化した場合は、抽出される透かし情報も劣化してしまう。そこで、透かし情報を自己想起型連想記憶に記憶し、透かし情報の復元を行う手法を提案した。相互想起モデルと自己想起モデルにより、誤りを十分に低減することができた。この成果はEMM研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果を国際会議APSIPAで2件発表した。また、国内発表では、5件の発表を行った。 最適化のアルゴリズムの提案として、英文論文誌に1件掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
ステゴ画像への攻撃を推定する手法として、パイロット信号を埋め込む方法を検討した。これは攻撃があっても、抽出可能であり、かつ、攻撃の大きさを推定できるものでなければならない。今年度は、拡大縮小攻撃を受けた場合について検討した。今後は、回転攻撃の大きさを推定する方法を検討したい。拡大縮小と回転攻撃の大きさが推定できれば、幾何攻撃の大部分に対応することができる。さらに、攻撃の大きさだけではなく、攻撃の種類も推定する枠組みを検討したい。しかしながら、攻撃の種類は多数あり、すべてに対応することは困難であると考えられる。パイロット信号の有効性の範囲を見極めたい。 連想記憶モデルを用いた誤り訂正法では、自己想起モデルを導入することによって、大幅に誤りを低減できることが分かった。これまでの成果をまとめ、国際会議での発表や、論文として発表できるようにしたい。今後は、誤り率の定量的な評価を行う。統計神経力学を用いることで、理論的な誤り率を求められると考えられるので、理論と計算機シミュレーションの比較を行う。ゼロ電子透かし法としては、画像からの特徴情報の抽出方法も検討する必要がある。不変性のある特徴情報を検討する。 ニューラルネットワークを用いた透かし情報の埋め込み器では、JPEG圧縮などの量子化攻撃に対応するため、オートエンコーダに量子化活性化関数を用いた手法を検討している。学習時に量子化することによって、量子化に対応した埋め込みと抽出を行えるようになると期待できる。また、階層型のオートエンコーダを、フィルタ型のオートエンコーダに変えた場合も評価してみたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に、コロナにより出張が激減し、未使用額が発生していた。その繰越額が残っていたことと、2021年度も海外を含む、出張が中止となったため、予定していた旅費に未使用額が生じた。3月にようやく対面による発表会が開催された。 2022年度は、対面による発表会が復活すると思われるので、EMM研究会で成果発表を行いたい。国際会議APSIPAへの投稿を予定している。参加費および英文校正費用に当てたい。 また、オンラインによる情報交換を促進するため、必要に応じてZoomアカウントを購入したい。
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