研究課題/領域番号 |
20K11982
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
花田 良子 関西大学, システム理工学部, 准教授 (30511711)
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研究分担者 |
中尾 昌広 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 技師 (50582871)
折登 由希子 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60364494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多目的最適化 / 連続関数 / 交叉 / 大域探索 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は,複数の実数連続関数からなる多目的連続最適化を対象として,異質の解からなるパレート近似フロントを形成するにあたり,設計変数空間での多様性向上に重点をおいた多目的遺伝的アルゴリズム(多目的GA)の手法を開発することである. 2021年度は,昨年度に続き,多目的GAが大域/局所パレート最適解を導出する過程の分析のため,さらに設計変数の数を増やした規模の大きなNKモデルに基づくビットのベンチマーク問題を複数作成するとともに,それらの大域的パレート最適解を列挙法により求めた.その例題を用いて,母集団の収束を目的とした内挿的な交叉と,集団の分布を広げる役割をもつ外挿的な交叉の適用のバランスを検証した.その結果,一般に単一目的の最適化問題においては,内挿的な交叉が主探索オペレータで,外挿的な交叉は補助的な役割であるのに対して,パレート最適解が大きな広がりを持つ多目的最適化問題においては,外挿的な交叉が探索性能の向上に大きく寄与することがわかった.また,単一目的の連続最適化において強力な探索性能を有する実数値交叉adaptive real-coded ensemble crossover (AREX),および多親を用いたunimodal normal distribution crossover (UNDX-m) を多目的連続最適化に拡張し,代表的な多目的GAの手法であるNSGA-II (Non-dominated Sorting Genetic Algorithm II) の探索の枠組みのもとで,ベンチマーク問題ZDT,WFGの例題で探索性能の比較検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多目的GAの探索性能の分析,改良を行うため,2目的のビットのベンチマーク問題を作成した.また列挙法により得られた真のパレート最適解群を設計変数空間での距離をもとにクラスタリングした結果,設計変数空間上で幅広く分布した異質の解からなるパレート解集合であることが確認でき,大域探索の指針の検討のための分析環境が整った.また,単一目的の連続最適化の実数値交叉を多目的最適化に拡張し,母集団の分布を調節するパラメータの初歩的な検討を行い,今後の改良の指針を得た.
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今後の研究の推進方策 |
真のパレート最適解が既知の3~5目的のNKモデルのベンチマーク問題を作成し,パレート最適解の分布を確認するとともに,探索空間を分割したもとで,各部分設計空間での多目的GAの収束傾向を分析する.また,引き続き,多目的連続最適化における実数値交叉の効果的な拡張について検討する. 並列計算環境における各部分設計空間探索のスケジューリング,利用できる計算資源の規模に応じた部分空間の再帰的な細分化の停止(枝刈り)を行うアルゴリズム開発を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークステーションを購入する予定であったが,これまでのワークステーションの利用,および他所で計算環境を引き続き借りることができ,その購入を次年度に延期したこと,また,コロナ禍のもと,共同研究者と直接ミーティングが実施できず,旅費として使用しなかったため,次年度使用額が生じた.次年度は,共同研究者間で分担しているプログラムの統合等で直接ミーティングを複数回,実施する予定である.また,研究成果報告のため,ノートパソコンを2台購入する予定である.
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