研究課題/領域番号 |
20K11985
|
研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
山口 裕 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (80507236)
|
研究分担者 |
奈良 重俊 岡山大学, 自然科学研究科, 特命教授 (60231495)
津田 一郎 中部大学, 創発学術院, 教授 (10207384)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 深層学習 / カオス / 敵対生成ネットワーク / リアプノフ指数 / アトラクタ / CycleGAN |
研究実績の概要 |
本研究は種々の深層学習モデルに現れ得るカオス的ダイナミクスを解析し,情報処理への応用を考察し,よりダイナミクスを利用した動的な処理を用いる人工知能を実現すること目的としている.2021年度は深層学習モデルにおけるカオスを利用した情報処理を実現するため,1)深層連想モデルの開発とその力学系としての観点からの解析, 2)深層モデルにより生成された疑似カオス時系列の特徴付け, 3)リザバーの自己組織化による学習の検討,を行った. 1)の深層連想モデルでは敵対的生成モデルのひとつであるCycleGAN を使い,あるカテゴリの画像から他のカテゴリ画像を変換により連想させ,さらにその画像を元のカテゴリの画像に再度変換させることを学習させた.この変換を繰り返し行う系は力学系とみなすことができるため,アトラクタの性質を中心に,大自由度力学系としての性質を調べた.その結果,このモデルは同じカテゴリーの画像の中で多様な画像を次々と生成できることを確認した.この系には非常に多数のアトラクタが存在すること,その中にはカオス的な性質を持つアトラクタが含まれること,各アトラクタが引き込む初期画像の個数には大きな偏りがみられること等を確認した. 2)の疑似カオス時系列については,敵対生成ネットワーク(GAN)によってカオス的な時系列を生成することを学習させ,学習後のGANが生成する疑似時系列を非線形時系列解析の観点から解析した.学習により,決定論的性質や大域的な分布を近似的に再現する擬似的な時系列を生成できることがわかった.さらに,この擬似的な時系列のリアプノフ指数の推定により初期値鋭敏性を持つとみなせることがわかった. 3)については,リザバーネットワークを情報量の基準により最適化する実験を行い,カオス的時系列を学習することができることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究成果に関連した論文の出版ができており,さらに今年度の成果に基づいて次年度で複数の論文執筆ができる状況になったと考えられるので,おおむね順調に進展していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
深層連想モデルに関しては,複数のタイプを開発し,性能の違いを比較する.また,シナプス結合を一時的に切断することで,アトラクタ間を巡るカオス的遍歴的な軌道を誘発し,多様な画像を連想的に生成することができないか検討する.結果は論文誌に投稿や国際会議での発表を行う. 疑似時系列生成に関しては,モデルが生成した時系列と真の系列の誤差を分析し,カオス的な時系列生成の改良や,疑似時系列を検出する手法開発への応用を検討する.解析の結果は論文誌への投稿や国際会議での発表を行う.リザバーモデルに関しては,自己組織化させたネットワークを使ってカオス時系列の生成・予測が可能かを検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響が続いているため,研究打ち合わせや学会参加をオンラインにより行った結果,旅費の使用額が予定よりも下がり次年度使用額が生じた.最終年度の研究とりまとめのための研究打ち合わせ旅費や学会・国際会議への旅費を中心に使用する予定である.
|