研究課題/領域番号 |
20K11992
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
堂薗 浩 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (00217613)
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研究分担者 |
中國 真教 福岡大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10347049)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 時系列処理 / Reservoir Computing / 自己組織化マップ / ランダムニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Reservoir ComputingとSelf Organizing Map を融合した Reservoir Self Organizing Mapのアルゴリズムを開発し、画像やDNA配列などの静的なデータや、株価や音声データなどの 動的な時系列データへの応用を行うことである。 近年, Deep Learningは様々な分野で用いられ,その優れた性能が示されているが,実際に学習を行うには非常に多くの重み値を更新する必要があるため,農大な計算量が必要で,高性能なCPUやGPUが必要になり,一般的なIOT機器ではもちろん,ノートパソコンなどでは実行することが困難である.Reservoirコンピューティングはランダムに結合された固定値のネットワークを用い,出力部分の一部の重み値のみを学習させることで,学習に必要となる計算量を大きく削減させることができる計算手法である,ただ,重み値が1つの組み合わせのみでは,全てのデータに適合できるとは限らないため,分類や時系列の予測の精度が上がらない可能性がある. 自己組織化マップは,入力されたデータを教師データなしに分類することができるニューラルネットで,データ間の関係を低次元の空間に写像することができるため,一般的にはデータ間の関係の資格化によく用いられる.本研究では,この特性をいかし,Reservoirの内部状態に合わせて出力の重み値をきりかえることで,Reservoir Computuingの性能向上を目指すものである.現在,そのアルゴリズムの開発と,時系列処理の実験を行なっている. また,本研究で用いる可能性のある球面畳み込み自己組織化マップについても,研究を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Reservoir自己組織化マップのプログラムを作成し,時系列予測や判別の実験を行なって,その特性の解析を行っている,具体的には,まず,Reservoirコンピューティングについて,入力系列とReservoir内部の状態,Reservoir出力ノードの特性を自己組織化マップを用いて解析し,時系列が内部状態や出力ノードに変換されている様子を確認した.その後,自己組織化マップの出力ノードにリザーバの出力行列を関連付けて学習させる申請文書のReservoir自己組織化マップType1を作成し,様々な時系列データを用いて実験を行った.また,球面自己組織化マップやグラフ畳み込みネットワークを用いることで性能向上が計れる可能性があるため,従来から引き続き研究をすすめている, 本研究のプログラム開発は,C言語とPythonを用いて行なっている,特にPythonは近年機械学習で多くのユーザに使われている言語であり,研究終了後のプログラム公開時に重要であると考えている. また,今年度は,Reservoir Computingや時系列解析,および,Deep Learningなどの一般的な機械学習の調査のため,IEEE World Congress on Computational Intelligence, International Conference on Neural Information Processing, AAAI Conference on Artificial Intelligence, International Congress on Information and Communication Technologyなどの学会にオンライン参加し,球面自己組織化マップについて1件の発表を行なった,
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今後の研究の推進方策 |
まず,昨年度に引き続きReservoir自己組織化マップのアルゴリズムの改良,および,申請書でType2アルゴリズムとした,複数のリザーバを自己組織化マップを用いて選択するアルゴリズムの開発を行う,また,教育分野のデータおよび福祉分野のデータへの適用を考えている。 教育分野におけるデータへの適用については、学生が授業中に書き留めているノートの解析を計画している。学生のノートに対して今回開発するアルゴリズムを適用し、学習の進捗状況や理解度の把握、そして、理解が不足している点の発見を試みる。 福祉分野におけるデータへの適用については、聴覚の機能を失い、音声を発することができない「ろう者」が他者と円滑に対話するための支援ツールの研究開発を計画している。従来行われてきた読唇術をコンピュータ上で再現し、読み取った結果を文字としてコンピュータのモニタに表示することで、手話や筆談を行わずにろう者と健常者が対話することを試みる。また,申請者がチュータをしている聴覚障害者(「ろう者」ではないが重い障害)との話によると,読唇は自分でできるがオンライン講義では口元が見えないので理解できないということであった.そこで,オンライン講義用にビデオなどに録音された音声から唇の動きを再現して,パソコンやスマートフォンなどに表示するシステムを開発を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった計算用のコンピュータに関してはCPUが一新される次モデルの発売を待つことにし,3月まで待ったが未発売であった.また,残りは国際会議の旅費と参加費であったが,コロナ禍で渡航が不可能になったため,オンラインの会議への参加費のみ使用した. 繰越分に関しては,今年度の国際会議の旅費参加費,および,応用システムの開発に用いるコンピュータの購入に当てる予定である.
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