研究課題/領域番号 |
20K11994
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
重井 徳貴 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (90294363)
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研究分担者 |
宮島 洋文 長崎大学, 情報データ科学部, 准教授 (60781995)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 機械学習 / エッジコンピューティング / ディープラーニング / 画像認識 / セキュリティ / IoT / モバイルロボット |
研究実績の概要 |
1) エッジデバイスにおける機械学習の低コスト化・高精度化として、パンチルトカメラを備えたシングルボードコンピュータを用い、個人識別機能を有する人物自動追跡を行うエッジデバイスの開発を行った。設置から稼動開始までの時間短縮を目的とした深層学習モデルの学習法、追跡精度向上のための追跡アルゴリズムなどを提案し、提案システムの有効性を示した。この成果は、論文誌ICIC Express Letters、国際会議ICICIC2021で発表している。 2) 低コストなIRセンサを用い、プライバシー確保のメリットがあるサーモグラフィーによる非接触入力インターフェースについて検討した。深層学習モデルによる指の本数の識別に基づく方式において、識別精度改善のために背景削除の手法を提案し有効性を示した。この成果は、国際会議ISIKM2022などで発表している。 3) データ収集の自動収集および屋内の自動巡回の用途に使用することを想定した安価なハードウェアで実装した移動型ノード(モバイルロボット)の自動走行に関しては、これまで困難だった切り返し動作を獲得できる深層学習モデルを提案し、その成果を論文誌AROBで発表している。 4) セキュリティを考慮した機械学習として、セキュアマルチパーティー計算(SMC)を用いた手法を検討し、IoT上のデータを秘匿したままベクトル量子化及び線形写像を実行する手法を論文誌AROBにおいて、データを秘匿するために分解データを用いるニューラルネットワーク(NN)の学習におけるデータの分解方法を随時更新するよりセキュアな手法を国際会議IMECSにおいて、通信が制限される場合のNNの学習法を国際会議AROBにおいて、分解データを用いた粒子群最適化を用いたNNの学習法を国際会議IMECSにおいて発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R3年度の実績として、エッジコンピューティングにおいて機械学習を低コスト、高精度、高速、容易かつセキュアに実現する手法の開発に関しては、個人識別機能を有する人物自動追跡を行うエッジデバイス、顔特徴を用いた個人識別の低解像度画像における精度改善(国際会議AROB2022で発表)、屋内巡回に用いるモバイルロボットのための深層学習モデル、サーモグラフィーを用いた非接触入力インターフェース、エッジデバイス上でデータを秘匿したまま計算を行う各種の機械学習のSMCアルゴリズムなどの成果がある。それぞれの成果において、一定の進捗は見られるが、新型コロナウイルス感染症流行の影響で、研究施設内での研究活動が制限されたため、実地での実験やデータ収集が十分に行えなかった。そのため、モバイルロボットの巡回範囲の拡大、スマートオフィスのためのアプリケーションである退勤・入退出管理の実装、SMCの精度と処理時間を考慮した実装などは進捗が遅れている。 以上から、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度も実地での実験やデータ収集は制限される可能性があるので、手法の改善と実装を並行して進めていく。具体的には、以下の内容について研究を推進する。顔特徴と衣服特徴を用いた個人識別、人物自動追跡を行うエッジデバイス、サーモグラフィーを用いた非接触インターフェースの改良を行うとともに、これらを活用した入退室管理と不審者検出などのスマートオフィスのアプリケーション開発をすすめる。移動型ノード(モバイルロボット)の自動走行に関しては、複数の深層学習モデルを自動的に切り換える手法を検討し、より広範囲の巡回に適用できるよう改善を図る。セキュアな機械学習に関しては、SMCを用いた機械学習において、秘匿性の向上に加えセキュリティ上の脅威や攻撃に強い手法、計算時間を短縮するための通信の高速化や通信量を削減する実装法の検討をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、参加した国際会議や国内学会がオンライン開催となり、旅費が不要となった次年度使用額が生じた。次年度使用額については、オンサイトとオンラインのハイブリッドとして開催される国際会議、国内学会への参加のための旅費と参加費、論文誌の掲載費用として使用する予定である。
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