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2022 年度 実施状況報告書

階層化ふるい分けSOMによる画像認識システムに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K11999
研究機関関西大学

研究代表者

肥川 宏臣  関西大学, システム理工学部, 教授 (10244154)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード自己組織化マップ / ハードウェアアクセラレータ / 画像認識 / Fashion-MNIST
研究実績の概要

階層化ふるい分け自己組織化マップ(Self-organizing map: SOM)を提案している.SOM を使った認識システムとして,複数の SOM を使った Class-SOM の研究も行っているが,これに用いる個別の SOM にふるい分けSOM を用いた認識システム(Class-ふるい分けSOM とする)では学習時間を大幅に短縮することができた.しかし,認識率の向上は頭打ちで,あまり向上しなかった.そこで,令和4年度は,これらの認識のベースとなる SOM の認識率を上げる方法の模索を行った.その方法として,画像認識に対して前処理の導入,学習時におけるベクトル要素ごとの重みづけ,等の効果を調べた. Fashion-MNIST (FMNIST)による実験を行った.その結果,前処理に画像の二値化,画像の切り出し(画像の一部のみを認識に使用),さらに切り出し画像に含まれる周波数成分を認識に使用することが有効であることがわかった.また,画像の二値化を導入することで Class-SOM の認識率を改善させることができた.

SOM の学習するために多数のプロセッサによる並列処理を行うハードウェア SOM の開発を進めている.プロセッサの配置を単純な2次元配置から,入れ子構造にしたアーキテクチャを前年度までに提案している.この入れ子構造アーキテクチャは,ハードウェア記述言語である VHDL を用いて論理合成を行うと,より小さな回路規模,高速な回路が生成できることが分かった.この成果を国内研究会で発表するとともに,国際ジャーナルに投稿中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度までに,階層化ふるい分け SOM を拡張した Class-ふるい分けSOM を提案した.階層化ふるい分け SOM では,使用する SOM のサイズを小さくすることができるうえに,マルチコア CPU での実装と相性が良く,学習時間を 1/50 に短縮することができた. Fashion-MNISTと呼ばれるデータセットを用いた認識実験で認識率を84%まで改善できたが,目標とする 90% には至らなかった.そこで,認識前に画像に対する前処理を付加することで,さらなる認識率改善を目指した.さまざまな前処理を使った認識実験を行い,最適な前処理の組合せを模索した.その結果,画像の二値化,画像の切り出し(ベクトル比較に使用する要素選択),画像に含まれる周波数成分を認識に使用することで,単一 SOM における認識率を 78% から 82% まで改善することができた.しかし,適切な前処理調査に時間がかかったため,上記前処理を追加した Class-ふるい分けSOM の性能評価はできなかった.

SOM の学習時間短縮/高速化のために専用アクセラレータとして入れ子構造のハードウェア SOM についての研究を進めた.これはモジュールを階層化させた構造で,簡単に大規模の SOM を実装することができる.アクセラレータは,プログラム可能なデバイスである Field Programmable Gate Array (FGPA) への実装を想定している.実装は SOM 回路の構造をハードウェア記述言語であるVHDLで記述し,論理合成により FPGA 用のデータに変換し,FPGA にダウンロードすることで行われる.入れ子構造 SOM は論理合成の結果として得られる回路は規模が小さく,より高速動作が可能なものとなることが分かった.

今後の研究の推進方策

令和4年度の研究で,画像に前処理を加えることで認識性能を改善できることが確認できたが,提案している Class-ふるい分けSOM における効果を確認できていない.今後は,まず令和4年度で効果を確認した前処理を追加した Class-ふるい分け SOM の認識性能の評価を行う.個別処理のアルゴリズムは確定しているので,Class-ふるい分け SOM の実装は問題なく行えると考えられる.最終的には,現在の Fashion-MNIST に対する認識性能を認識率86%を90%以上にすることを目標とする.必要であれば,さらに前処理の追加改良を行う.

ハードウェア SOM アクセラレータについてもさらなる高速化を目指す.令和4年度までのハードウェア SOM の開発過程において,SOM の処理に用いられる近傍関数の簡略化が可能であることを示す実験結果が見受けられた.従来の SOM ではガウス関数が近傍関数として用いられてきたが,ハードウェア SOM では回路を簡単化するために,2のべき乗型関数が用いられてきた.これをさらに簡略化した二値関数とすることで,さらなる回路の小型化と高速化を目指す. 二値化近傍関数を用いた SOM の性能をシミュレーションで検証し,性能劣化が無いことを確認した後,ハードウェア開発を行う.

次年度使用額が生じた理由

当該年度は世界的なパンデミックのため,出席を予定していた国際会議,国内会議がリモート開催となった.そのため,予定していた旅費が不要となり次年度使用額が生じた.
次年度は,今までの研究成果発表の費用(国際会議,国内会議,国際ジャーナルへの論文掲載と英文校閲等)に充てる計画である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 入れ子構造を持つハードウェア自己組織化マップアーキテクチャ2022

    • 著者名/発表者名
      肥川宏臣
    • 学会等名
      信学技報, 機能情報集積システム研究会
  • [学会発表] ハードウェア SOM 用近傍関数の改良2022

    • 著者名/発表者名
      肥川宏臣
    • 学会等名
      信学技報, 機能情報集積システム研究会

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公開日: 2023-12-25  

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