本研究は、エンジンを有する電動車両の燃費改善に資する研究取組である。自動車のエンジン排気系ユニットは、排気ガスと水冷により数百度の温度差が生じる。これまでの研究取組により、温度差から電気を発電する「熱電池」をこの種の車両の排気系ユニットへ取り付け、バッテリーへ電力回生する「排熱発電システム」の開発を産学連携して進めてきた。しかし、実用化が想定される発電環境においては、温度分布の不均一性(温度ムラ) により、熱電池の出力電力特性に局所解が生じる可能性がある。本申請課題は、学術的な観点から温度ムラ発生時の排熱発電システムの回路動作を解析し、工学的応用につなげることを目的とする。以下、各実施年度毎に研究成果を記載する。 2020年度は、熱電池を有する電力変換回路について、温度ムラ発生時の回路動作特性を解析するための等価回路モデルを構築した。また、本回路モデルを解析するための回路シミュレータの開発を行った。 2021年度は、温度ムラ発生時の熱電池の出力電圧のバラツキを考慮し、熱電池を有する電力変換回路の回路動作を解析した。また、回路設計ソフトを用いて同回路の回路設計および基板実装を行った。回路実験を通じて、電力変換効率、電力利用率、システム効率の観点から、実装回路の性能を評価した。 本研究の最終年度となる2022年度は、2021年度までに提案・構築した開発環境をベースに、温度ムラ発生時の排熱発電システムに生じる非線形現象の解析を行った。また、数値シミュレーション結果と実験結果を比較し、非線形現象の発生が、回路性能に及ぼす影響を調査した。
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