研究課題/領域番号 |
20K12013
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
藤田 豊己 東北工業大学, 工学部, 教授 (90293141)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多脚クローラ型ロボット / 自律作業 / 深層学習 / 対象物探索 |
研究実績の概要 |
本研究では,災害等での人間に危険な現場で,6脚を有するクローラ型移動ロボットが脚を腕としても用いてクローラとのハイブリッド移動をしながら,自律的に作業を実行できる技術の確立を目指す.特に,物体回収・運搬の作業を対象とし,対象物の認識や自律的な操作を可能とすることを目的とする. 2022年度では,前年度から行っていた深層学習Single Shot Multibox Detector(SSD) を適用した対象物検出を発展させ,ロボットによる認識とそれに基づく実環境での探索行動を実現した.また,スプレー缶を想定した円柱形状の対象物の自律的把持方法を考案した. 対象物検出では,前年度の手法では,対象物が遠距離になると未検出となるという問題が生じた.そこで,画像を全体のみならず,対象物領域を切り出した画像も加えて学習を行った.また,検出時にタイリングにより探索領域を分割し,各領域での検出結果を利用した.その結果,対象物の初期検出の性能が大きく改善された.さらに,探索行動時の検出手法も工夫し,検出領域を追跡して限定することで検出性能を向上させることができた.そして,初期検出時の誤検出と対象物への接近時の検出失敗にともに対応できるよう,接近中の連続する検出結果に応じて誤検出の判断をするようにし,実験により調整をした. 対象物の自律的把持については,デプスカメラを本体に搭載し,把持可能な位置に到達した後にそのセンサの情報より対象物の輪郭線を得て把持位置を決定する手法を考案した.ロボットは移動できるので,対象物の状態は直立状態か横転かの2通りのみ考えればよく,両状態に対応できる方法を検討した.本手法はシンプルでなおかつ有効な把持情報を得られることが利点である.実機による自律把持実験を行い,その結果,提案手法の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の結果も踏まえた2022年度の計画では,深層学習による対象物検出の実現を第一に目指した.これについては,遠距離での検出が向上され,一定の成果が得られた.さらに,実際の現場で対象物を認識し,それを自律的に把持運搬する一連の自律動作を実現することを目指していたが,これについては,対象物の認識と接近までは達成できたが,自律把持については,実験室内での実現にとどまり,実際の現場では達成できなかった.実際の環境では様々な問題があり,それらに対応することで時間が費やされてしまったことが大きな理由である. 多面体形状対象物の自律把持についても検討を予定していたが,箱上対象物において本体および脚先に搭載した深度カメラと距離センサの情報から形状等を得て,把持領域および脚先位置・姿勢を検出する手法を考案したものの,実機での検証までには至らなかった.こちらも検出・探索の研究を優先したために注力しきれなかったことが理由である. また,当初予定していた注視モデルの構築には着手できなかった.だが検出については深層学習 SSD を用いた手法である程度の成果が得られたので,この手法を考慮するよりも,その他の課題を優先するべきであると考えている. さらに,応用課題である,脚とクローラのハイブリッド制御による板下対象物回収動作についても計画していたが,まだ動作モデルを検討した段階であり,実機により一連の作業動作を検証するまでには達していない.それ以前のハイブリッド移動制御の研究で時間を要してしまったためである.
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今後の研究の推進方策 |
深層学習による対象物検出については,ある程度の目処が立ったので,実際の現場での対象物把持と運搬を実現し,一連の自律動作を実現することを目指す. また,円柱形状対象物のみならず,多面体形状対象物についても考案した把持情報の獲得手法を多脚ロボットに適用し,本体および脚先カメラの画像情報から得られた距離情報をもとに把持領域および脚先位置・姿勢を検出し,実際のロボットによる実験で手法の有効性を検証することを目指す. さらに,応用課題として,板下対象物回収動作について着手し,実機により一連の作業動作を検証する.最初は実験室内で実験環境を整備し,様々に条件を変えて実施する.そして,ロボットが適切な脚先位置・姿勢や客先力を推定して未知重量の対象物に対して柔軟な把持持ち上げ操作ができるようになることを目指す.その手法の有効性が得られたら次に実際の現場で実験を行い,本ロボットの有用性を示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度のコロナ禍の影響で,国際会議への参加がオンラインとなり,国内会議は対面参加だったものの,予定していた旅費を使用することができなかった.その分,学生等の研究補助員に対する謝金として一部使用した. ロボットに搭載する視覚システムについては,ハンドには簡便な距離センサのみを搭載し,ハンドカメラ等は検討するにとどまり,購入できなかった. 次年度の使用計画として,学会等の研究集会への参加費や旅費,論文投稿費での使用,学生等に対する研究補助の謝金を予定している.さらに,ロボットのシステムの機構的な改良も必要になってきており,その費用にも使用したいと考えている.特に屋外での動作実験のための環境を整えるために,防水防塵対策なども施すことが必要となる.また,カメラ映像の処理および学習機能を実装するためのホストコンピュータや開発用ソフトウェアも購入する計画である.
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