研究課題/領域番号 |
20K12018
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
野々村 美宗 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50451662)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Food texture / Friction |
研究実績の概要 |
(1)バイオミメティック食感センシングシステムの開発: 口腔内における舌の滑らかな動きを、正弦運動摩擦評価装置を用いて再現した。この装置ではモーターの回転を偏芯カムで往復摺動させて、生き物の動きを模倣した正弦運動が実現された。ヒトの舌と口蓋の濡れた階層性凸凹表面は、油脂結晶の表面構造を柔らかい寒天ゲル表面に転写したフラクタル寒天ゲルを用いて模倣した。 (2)非線形摩擦現象に着目した食感喚起モデルの構築: 正弦運動下で、フラクタル寒天ゲル間におけるエマるションの摩擦特性を評価した。このエマルション中にはオリーブオイルが分散しており、界面活性剤(Tween60/Tween65/オレイン酸混合物)によって安定化されていた。フラクタル寒天ゲル間にエマルションを挟むと、水を挟んだ場合と比べて、摩擦プロファイルが変化することを見出した。水中でフラクタル寒天ゲルを摩擦すると、垂直荷重と滑り速度を変化させても、往路と復路で摩擦挙動が同じプロファイル(stable pattern)のみが観察された。しかし、O/W 型エマルションを挟んだ場合には、往路と復路で摩擦挙動が異なる unstable pattern I や、超潤滑現象が生じる unstable pattern II が観察された。フラクタル寒天表面において、非対称の摩擦現象および超潤滑状態が生じることは極めて特異的である。O/W 型エマルションの油滴はゲルの粗い表面に閉じ込められ、ゲル間の毛管力がはたらく可能性がある。毛細管力によりゲルひずみが増加し、ゲルひずみの増加により超潤滑現象が誘発される。エマルションは口腔内で生じる摩擦現象を劇的に変化させ、コクやなめらかさといった複雑な食感の知覚に関係している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオミメティック食感センシングシステムを開発するとともに、エマルション系について非線形摩擦現象に着目した食感喚起モデルを構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
泡製剤について摩擦ダイナミクスを評価し、非線形摩擦現象に着目した食感喚起モデ ルを完成させる。さらに、食感データベースの構築に着手する。ジュース、スープ、ヨーグルト、チョコレート、スフレなどの食品について食感の官能評価と摩擦評価を行い、『非線形食感喚起モデル』が食品の種類や剤型に関わらず適用されるか否か、その普遍性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による移動制限により学会などが全てWeb開催となったため。
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