(1)食品の摩擦ダイナミクスの評価とその解析 申請者らは、食感データベースの構築のために、正弦運動摩擦評価装置を用いて55種類の液状及び半固形食品の摩擦ダイナミクスを評価した。今年度は得られたパラメータを主成分分析及びクラスター分析し、食品の摩擦ダイナミクスは平均摩擦係数、静摩擦係数、遅れ時間、Unstable patternの発現率で構成されるZ1、Stable pattern IIの発現率で構成されるZ2によって記述でき、4つのグループに分類されることを明らかにした。 (2)糖水溶液の摩擦ダイナミクスの評価とその解析 糖類は人間の生命維持活動に必須であるだけでなく、味や食感に影響を与え食生活を豊かにする役割がある。本研究では、単糖(グルコース、フルクトース)、二糖(マルトース、スクロース、ラクトース)、三糖(ラフィノース)、多糖(イヌリン、プルラン、アミロペクチン)の水溶液について摩擦評価を行い、分子構造の影響を解析した。単糖、二糖および三糖の水溶液では、その種類や量による摩擦特性の変化は見られなかった一方、多糖類の糖水溶液では、高粘度の場合に摩擦特性に変化が見られた。このことからヒトの口腔内で食感を効果的に変化させるためには、多糖類が適していることが示唆された。 (3)研究機関全体を通した研究の成果 本研究によって口腔内の環境を模倣した摩擦ダイナミクスの評価が可能になり、触感発現の物理的な期限を解析する手法が提案された。これらの新しい手法の有用性は実際の食品及びそのモデル系を用いて確認がなされた。
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