先行研究(Kurikiら(2017))では、The World Color Surveyで使用されたマンセル色票330色に対する日本人大学生が応答したカテゴリカルカラーネーミングの実験において、基本11色に加え「水色」の色カテゴリーがあることが示唆された。結果から、青と緑の領域において、色カテゴリーの一致度に差が見られた。当該研究初年度の実験においては、青と緑の領域に加え、黄と茶の領域(黄土色領域)においても色カテゴリーの一致度に差が見られた。これらの領域においては色の構成要素の個人差が大きい可能性があると推測された。そこで黄と茶の領域の色票に対して、エレメンタリーカラーネーミング法により色構成要素の変化についての実験を実施した。最終年度においては、エレメンタリーカラーネーミングにより得られた色構成要素の変化についての解析を実施し、黄土色の領域は、色構成要素の変化について個人差が大きいことが示された。このことは青と緑の領域同様に、同じ色相に対して異なる色構成要素が選択されていることを示唆している。また、最終年度は本実験で使用している330色の色票を用いた研究についての論文調査を実施した。ディープニューラルネットワーク(DNN)による物体の反射率推定の研究(H Heidari-Gorjiら(2023))においては、黄土色領域は青緑領域を含めた他の色相領域に比べて、明度判定のエラーが少なく、彩度判定のエラー多かった。青緑領域は彩度のエラーは少なく、明度のエラーが多かった。DNNによる解析においても黄土色領域と青緑領域は特徴的な色領域であることが示唆されており、人の色カテゴリー判断において、青緑領域のみではなく黄土色領域についてもさらなる検討が必要だと考えられる。
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