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2021 年度 実施状況報告書

アクティブタッチの快・不快を決定づける視・聴・触覚の物理的因子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K12024
研究機関大阪大学

研究代表者

秋山 庸子  大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50452470)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード触覚 / アクティブタッチ / なぞり動作 / 加速度センサ / 周波数解析 / 快・不快 / 機械学習 / ヒートマップ
研究実績の概要

アクティブタッチの特徴と快・不快との関係を調査するため、男女被験者11名に対して、加速度センサを指先に固定し、繊維製品やガラス、木材、金属板などの20種類の素材を30秒間往復してなぞるときの指の加速度を測定した。被験者は1つの素材をなぞった後、触感の基本的な要素である粗滑「ざらざら-なめらか」、摩擦「べたつく-滑る」、乾湿「乾いた-湿った」、温冷「冷たい-温かい」、硬軟「硬い-柔らかい」、快不快「不快-快い」の6項目について、各項目についての触感の度合いを7段階に分けたSD(Semantic Differential)法に基づいて官能評価を行った。
官能評価項目については、それぞれの素材について各官能評価項目の平均値を取るとともに、因子分析を行った。一方、加速度センサで得られた指先の6軸(x,y,z軸方向の加速度およびそれぞれの軸周りの速度)について、短時間フーリエ変換により、時間・周波数・強度の3時限で表されるスペクトログラムに変換した。最終的に9250個のスペクトログラムが得られ、このデータを用いた機械学習により、各官能評価項目を7段階に識別できるかどうかを調べた。その結果、快・不快や、硬軟、温冷など、一見なぞり動作とは直接関連しないと思われる項目を含めたすべての項目で96%以上の高い識別精度を得た。このことから、なぞり動作の加速度・角速度のみから快・不快を推定できることが分かった。
さらに、識別の際にスペクトログラムのどの部分が用いられているかを調査するため、Grad-Camを用いたヒートマップにより、どの周波数帯域がどの官能評価項目に寄与しているかを考察した。その結果、粗滑に関しては加速度の周波数帯域と明確な関係を持つことが分かったが、快・不快を含めた他の感覚については単純な関係ではないことが分かり、さらに詳細をすすめているところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年度は、加速度センサのデータをもとにした素材の判別にとどまっていたが、2021年度の研究により、機械学習を用いて、快・不快の度合いを数値で高精度に推定することができたことは、快・不快を数値として示すツール作成のための大きな一歩であるため、順調に進展しているといえる。ただし、ヒートマップを用いた周波数因子等の抽出は現在進行中であり、本手法で快・不快を推定した際の主な因子がまだ明らかでないため、次年度は、快・不快を決定づける物理的因子について、機械学習結果のヒートマップの更なる調査とともに、統計学的手法による検討も同時に行い、双方の結果から、指先の加速度のみから高精度に快・不快を推定できた理由を明らかにする予定である。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画では、視聴覚を含めた快・不快の物理的因子を探る計画であったが、コンクリートマイクを用いた予備実験により、触感に与える聴覚刺激の影響は、現在行っている加速度センサによる周波数解析の延長線上にあり、また一方で視覚的な効果については、要因が多すぎて物理モデルを複雑化させる要因となる可能性が考察された。
本研究の主眼はあくまでアクティブタッチ(能動的触知覚)にあるため、2022年度は摩擦や押し込み動作といったアクティブタッチに特徴的な動作について、被験者実験による快・不快の物理的要因の洗い出しを進める一方で、一定速度で動作する市販の触覚プローブとヒトの触動作との違いに着目し、機械的プローブの動きと対照して考察することにより意義があると考えた。したがって今後は、ヒトと機械の動きの比較により、対象との物理的相互作用に特化したアクティブタッチの物理モデルを構築する予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ影響により予定されていた学会がすべてオンラインとなり、国内外の出張ができなかったことと、研究室内での感染者発生により一時的に研究を実施できない状況になったため。
次年度は、機器測定の続きとそのデータ解析が主となるため、機器改良のためのパーツ、データ解析ソフトおよび解析用PCの購入、解析のための人件費として利用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Dynamic Temporal sensory Transition during Skin Application of Oligosaccharides: Correlation Analysis between sensation and Physical Properties2021

    • 著者名/発表者名
      Mutsuko TANIGUCHI, Akira HARASHIMA, Tatsuya ISHIHARA, Shimpei USHIO, Yoko AKIYAMA
    • 雑誌名

      日本レオロジー学会誌

      巻: 49 ページ: 241-246

    • DOI

      10.1678/rheology.49.241

    • 査読あり
  • [学会発表] 機械学習を用いた 触感識別法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      豊田英仁, 秋山庸子, 真鍋勇一郎, 佐藤 文信
    • 学会等名
      日本生体医工学会関東支部若手研究者発表会
  • [学会発表] 触動作解析による触感の定量化に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      山口 真輝, 秋山 庸子, 真鍋 勇一郎, 佐藤 文信
    • 学会等名
      第60回日本生体医工学会大会
  • [図書] 高級感を表現する要素技術と評価法2021

    • 著者名/発表者名
      井上勝雄、中務亜紀、稲葉隆、坂本真樹、田中由浩、佐伯光哉、秋山庸子、神宮英夫、佐藤孝、橋田規子、秋元英郎、長田典子、飛谷謙介、桐谷佳惠、服部守悦、山本義政、福井信行、安岡義彦、川澄未来子、吉田茂、添田喜治、岩宮眞一郎、吉田準史
    • 総ページ数
      290
    • 出版者
      ㈱R&D支援センター
    • ISBN
      978-4-905507-52-9
  • [備考] 大阪大学大学院工学研究科 環境エネルギー工学専攻 量子線生体材料工学領域 福祉工学グループの紹介

    • URL

      http://www.see.eng.osaka-u.ac.jp/seeqb/seeqb/study/wlf.html

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公開日: 2022-12-28  

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