申請者はこれまでに、人は対象の感性評価(美しさ、魅力、など)において、脳内に保有する理想的なイメージと眼前の対象物の類似度を計算することで瞬時にその感性価値を見積もることが可能であるという「心的テンプレート仮説」を提唱してきた。これまでに顔画像および車画像の美しさに関して、心的テンプレート仮説が成立することを報告してきた。本研究では、寝室をターゲットとして空間のように単一対象物ではなく複数の対象物の組み合わせで構成される対象に対しても心的テンプレート仮説が成立するかどうかを検討した。 寝室画像5万枚を学習した敵対的生成ネットワークモデル(StyleGAN)を用いて、高精度寝室画像を生成可能なAIを作成した。StyleGANが生成する寝室画像は256次元の特徴ベクトルによって特徴づけられている。被験者は、StyleGANの生成した寝室画像に対する魅力度を0-100の101段階で評価した。魅力度評定スコアを重みとして画像特徴ベクトルの重みを決定し、非線形処理を行うことで各個人の理想的な寝室イメージ(寝室心的テンプレート)再構築した。寝室心的テンプレートと検証用画像の類似度から、検証用画像の魅力度スコアが予測可能かどうかを検証した結果、90%以上の被験者において寝室心的テンプレートから魅力度スコアの推定が有意に可能であることが明らかとなった。 以上の結果は、寝室のような複数物体の配置で構成される空間の感性評価においても心的テンプレート仮説が成立する可能性を強く示唆している。
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