高齢健常者10人、Yahr3 PD患者16人(計測不良のため3人のデータが使用出来なかった)の計測をした。今回の研究では、PD患者の下肢における固縮の強さとオーバーラップ時間の相関は明らかにならなかったが、PD患者の歩行では、高齢健常者よりオーバーラップ時間が長いすり足歩行をインソールセンサでとらえることが出来た。得られた歩行データからの重症度推定が出来るかという検討に関しては、高齢健常者とYahr3で高い精度で重症度の推定が可能であった。一方で3人歩行データを記録したYahr2 患者では重症度の判定ができなかった。今回のケースでは高齢健常者とYahr3のデータ数がYahr2のデータ数より3倍ほど多く、データに偏りがあったことが一因として考えられる。また、歩行パターンを見てもYahr3 の実験参加者は高齢健常者と比べて歩行パターンがかなり異なっている一方で、Yahr2の実験参加者は比較的高齢健常者と同じような歩行パターンを示していたことも重症度が判定できなかった大きな要因であると考えた。本研究では10 秒ほどの非常に短い計測時間のデータを使用し、高齢健常者とYahr3の歩行データでは高い推定精度を得たことから、学習データが十分にあれば10程度の歩行データから重症度推定が可能であることが示唆された。今後の課題として、さらなる評価者数を増やすことや、軽症PD患者の歩行評価も行い、高齢健常者とパーキンソン病患者を、健康診断の場などで歩行データから鑑別することが出来ることを目指したい。
|