研究課題/領域番号 |
20K12049
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
長島 文夫 杏林大学, 医学部, 教授 (70348209)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生体情報 / ウェアラブルデバイス / 高齢者 / がん薬物療法 |
研究実績の概要 |
がん薬物療法を外来で行う際、定期診察や電話相談で患者全身状態の変化を適切に拾い上げることは、高齢者では非高齢者と比較して容易ではない。ウェアラブルデバイスの活用が期待されているが、高齢者において実施可能かについての報告は限定的である。2020年度は、apple watch(アップル社製、以下AW)とiPhone(アップル社製、以下iPhone)から構成されるシステムを用いて「高齢がんにおけるウェアラブルデバイスを用いた生体情報採録システムの実施可能性試験」を行った。 対象は杏林大学腫瘍内科外来に通院している65歳以上のがん患者20名で担癌状態や治療歴は問わない。書面による同意取得後に、AWを装着し、2週間後以降の診察時に回収した。対象者の生体情報は、企業と開発したアプリにより、サーバーを介してAWおよびiPhoneにデータが保存される。主要評価項目は装着時間/日で、装着時間はスタンド時間(1時間のうちに1分以上立っていた場合に1時間とカウント)とスタンドしなかった時間(1時間のうちに1分未満しか立っていない、あるいは全く立っていない場合に1時間とカウント)の合計とした。副次的評価項目は歩数、心拍数、心拍変動 、消費カロリー 、スタンド時間、高齢者機能評価(G8, VES-13)である。2020年3月に杏林大学倫理委員会で承認され、5月から登録を開始した。 計20名が登録され、患者背景は、男性/女性:14名/6名、年齢中央値:72歳(65-83)、原発巣は食道/胃/膵臓/大腸:1名/5名/3名/11名、PS0/1:13名/7名であった。装着時間/日(平均)は19.5時間/日で、睡眠時に装着しない患者が2名、2週目以降は装着しなかった患者が1名であった。今回構成したウェアラブルデバイスシステムを用いて生体情報を採録することは実施可能と判断し、次なる開発を進めることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は「高齢がんにおけるウェアラブルデバイスを用いた生体情報採録システムの実施可能性試験」を行い、本システムを用いて生体情報を採録することは実施可能であると判断した。また、臨床現場で活用していくために、連携方法や得られた情報を共有する仕組みの構築にむけてフィードバックすべき課題を把握できた。ただし、新型コロナ感染症による影響で、把握できた課題の解決に向けての協力者や協力施設との議論は十分には行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本ウェアラブルデバイスシステムは、市販されているAWおよびiPhoneにアプリを追加することでリアルタイム情報の把握・活用を可能としている。適切な体制を構築したうえで、治療担当医・訪問診療医等の連携による早期介入に応用可能と考えられる。2020年度に得られたデータをもとに、システムの改良に向けた準備を進め、かつ新しいシステムを用いてさらに対象を再設定して次なる臨床研究を実施する。なお、2020年度は新型コロナ感染症による影響で協力者や協力施設との議論が不十分となったため、オンライン会議等を工夫して研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者登録ペースおよびデータ取得は順調であり、今後の臨床現場で活用していくために、連携方法や得られた情報を共有する仕組みの構築にむけてフィードバックすべき課題を把握できたが、新型コロナ感染症による影響で、把握できた課題の解決に向けての協力者や協力施設との議論は十分には行えなかった。オンライン会議等を工夫して議論を深め、次なる臨床研究の準備を進め、研究を推進していく。
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