【背景・目的】ICTを用いた医療情報の有効利用が期待されている。超高齢社会を迎えた本邦では、高齢者や独居生活者が自宅で測定した生体情報を診療等に役立て、効率よい医療を展開することは重要である。本研究では、生体情報をリアルタイムで拾い上げ、測定したデータを他者と共有するシステムを開発し、実装を目指すことを目的とした。 【方法および成果1】Apple watch(以下AW)とiPhoneから構成される機器を用いて、高齢がん患者を対象に実施可能性試験を行った。計19名(年齢中央値:72歳(range:65-83))の登録を行い、2週間以上にわたりAWを装着し、主要評価項目の装着時間/日(平均)は18.6時間/日で、高齢者であってもAWを継続して装着可能であることが示唆された(2020年日本癌治療学会総会にて発表)。同時に行った使用後調査も加味し、高齢者であってもAWを用いて生体情報を利活用することは可能であると考えられた。一方で、スマートホン操作に慣れていない場合、簡便な仕組みも必要と考えられた。 【方法および成果2】スマートホン操作に慣れていない高齢者や独居生活者にも利用できるシステムを準備した。特徴は、(1)Bluetooth対応の血圧計で測定するだけで細かい設定は不要(エフォートレス)、(2)LPWA(low power wide area)のネットワークを利用(通信費は低価格)である(アプリ開発を合同会社ドリームグロウ、LPWA端末開発をソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社に委託し試作品を開発)。2023年度に本システムが稼働することを確認した、今後は実施可能性試験を行う。なお、充電式バッテリーを用いることで、平時は診療の補助として活用、災害時にはLPWAを用いて、生活インフラが遮断された場合の見守りシステムとしての活用も検討する。
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