研究課題/領域番号 |
20K12056
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
坂手 龍一 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, サブ研究リーダー (50509495)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 難病・希少疾患 / 薬物(医薬品)の開発情報 / 標的遺伝子・パスウェイ / 疾患横断的な比較 / 創薬標的の選定 / 薬物作用機序・疾患発症機序 |
研究実績の概要 |
難病の多くは患者数の少ない希少疾患であることから、取り残された疾患領域として治療法開発は喫緊の課題である。我々は難病・希少疾患の臨床試験のデータから開発薬物(医薬品)情報を抽出し、その標的遺伝子・パスウェイの情報をつないで、疾患横断的な比較を可能とする創薬情報体系の構築を目指している。これは、創薬標的の選定や、薬物作用機序、疾患発症機序に関わる新規発見のための、重要な情報体系となることが期待できる。 本研究初年度の令和2年度は、解析・データベース開発環境を整備・強化して、(1) 疾患名(指定難病333疾患)、薬物(医薬品)名、遺伝子名のオントロジー(和名、英名、別名、同義語などの辞書)構築と、(2) 臨床試験情報のデータベース開発を実施した。約3,000万件のPubMed全論文タイトルと要旨のテキストマイニングによる、指定難病333疾患に関する約74万論文の抽出と、それらの論文における薬物と遺伝子の情報から、疾患横断的な創薬研究動向を明らかにした。また、日米欧中の臨床試験レジストリの最新データ(2021年3月)から、解析手法の向上により網羅性・正確性を高めて約3万件の臨床試験データを抽出し、開発薬物、標的遺伝子の情報を分析した創薬情報データベースを更新・公開した(DDrare, Database of Drug Development for Rare Diseases;ddrare.nibiohn.go.jp)。本研究では、このDDrareを中心に、疾患、薬物(医薬品)、遺伝子の情報をつなぐ創薬情報体系の構築を実現し、製薬企業などからの意見をもとに改良を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である令和2年度に計画していた、①サーバコンピュータの購入とデータベース開発環境の整備、②疾患、薬物(医薬品)などのオントロジー整備アルゴリズムの開発、③各種最新データ取得によるデータベースの更新を、所属研究室スタッフの助力も得て、ほぼ計画通り実施できた。 ②のオントロジー整備においては、我が国の指定難病333疾患の疾患名を2段階の階層構造化し、日本語と英語の両方でリストを作成・更新した。このリストは、Wikidataや他のデータベースでも利用されている。この疾患名と薬物(医薬品)、遺伝子については、PubMed論文(タイトルと要旨)のテキストマイニングによる情報抽出に利用した。その抽出結果からのフィードバックによりリストを検証し改善を実施した。 ③の各種最新データ取得によるデータベースの更新についても、DDrare(ddrare.nibiohn.go.jp)を、②のオントロジー整備を踏まえて、年度内に実施することができた。DDrareのシステム面においても、ソートや抽出機能などを部分的に実装でき、データ利活用の利便性を向上させることができた。 これらは、次年度令和3年度の計画を進めるための必要な成果であり、製薬企業などとの連携も進めることができたため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる令和3年度は、①疾患関連遺伝子(多型・変異情報を含む)、副作用・表現型、モデル動物対応などのオミックス情報を連結して体系化、②日本人類遺伝学会(予定)で研究成果を発表、③各種最新データ取得によりデータベースを更新を計画している。現時点で予定通り実施見込みである。①と③については、GARD(アメリカ)とOrphanet(欧州)の疾患についての情報の連結を含み、難病・希少疾患の疾患データの拡張を行う。疾患、薬物(医薬品)、遺伝子などのオントロジーについても、特徴量(TF-IDF,Term Frequency - Inverse Document Frequency)解析を実施するなど、発展的な解析を実施する。また、③のデータベース(DDrare)の開発を、外部委託を含めて本格化する計画である。なお、②の研究発表に関しては、3年目を含めて、昨今のコロナ禍での学会開催状況に影響を受けると考えられるが、論文発表などは予定通り進めていく計画である。製薬企業などとの連携についても影響を受けているが、オンライン会議などを通じて可能な対応をとっていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた、サーバとして使用するコンピュータの購入において、1万円以下の残額が発生した。次年度使用額として、予定している論文投稿またはDB開発の費用への補填として使用する計画である。
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