日光からの紫外線曝露による肌ダメージは日光角化症や扁平上皮がんの発症リスク上昇等の重大な問題を引き起こすことが知られている。紫外線下では皮膚の色素沈着が強調され、可視光下では捉えることが困難な色素沈着の測定が可能であり、紫外線下での写真(紫外線写真)による色素沈着の測定を通した肌ダメージ評価が可能である。しかしながら、紫外線写真の撮影には専用の撮影装置が必要であり、可視光下で同様の評価が可能となることが求められていた。本研究では、条件付き敵対的生成ネットワーク(GAN)の枠組みで深層学習モデルであるU-netを用いて、可視光下で撮影された写真(可視光写真)から自然な紫外線写真の生成が可能となる手法を開発しており、専用の撮影装置により撮影された可視光写真と紫外線写真から有効性を確認している。開発手法は専用の撮影装置から取得された写真を想定していることから、スマートフォン等の専用の撮影装置以外で撮影された写真(スマートフォン等写真)では生成される紫外線写真の精度が低下する問題があり、スマートフォン等写真からも高い精度での紫外線写真の生成を可能とする手法開発を進めてきた。 本年度はスマートフォン等写真に対応した手法開発のため、東北大学病院の皮膚科専門医らと現在までに200枚以上のスマートフォン等写真を取得している。また、条件付きGANでは可視光写真と紫外線写真のペアが学習に必要であるが可視光写真のみしか存在しないスマートフォン等写真も学習へ使用可能となるようCycleGANの枠組みも組み込んだ学習手法を実装している。現在、実装した手法について評価を進めているが、深層学習モデルとして用いているU-netはモデルサイズが小さく軽量であるが表現力が小さく、データの利点を活かせていない可能性を示唆する結果を得ている。このため、サイズが大きく表現力の高いモデルを用いた実装を進めている。
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