病院の院内検査室における生理機能検査は、基本的に臨床検査技師(以下技師)が患者に1対1で対応するため人手と時間がかかり、かつ熟練した技師を配置する必要があることから、検査部運営の効率化にとって大きな障害となっていた。さらに、2020年から全世界で新型コロナウイルス感染症が蔓延し、潜在的なコロナ陽性患者が呼出努力を伴う呼吸機能検査を行うことで検査担当の技師が感染のリスクに曝されるという問題が生じてきた。本研究では、生理機能検査室の効率化と技師を新型コロナウイルス感染症から守ることを目的として、呼吸機能検査(スパイログラム)の操作をビデオと音声のアシスト下で患者自身が自分で行う自動呼吸機能検査システム(オートスパイロ)を構築することである。令和2年度に、「人工知能装備型自動呼吸機能検査システム(オートスパイロ)の開発」の前段階として、患者に呼吸機能検査の説明と検査の指示を行うAI搭載ロボット(ユニボ)の試作機を開発した。それを用いた臨床研究実施の承認が、令和3年4月26日に当大学医学部倫理委員会より下りた(MH2020-001)。令和3年10月21日より、当院附属内丸メディカルセンターの人間ドックの受診者で同意が得られた方にユニボによる呼吸機能検査を実施し、令和4年6月末で予定の50症例を蓄積することができた。その研究成果は、令和4年11月に宇都宮で開催された第69回日本臨床検査医学会学術集会で発表された。その発表で、①今回用いたスパイログラムの機器の操作画面が見にくい、②ユニボの説明で一部わかりにくい点があるなどの問題が指摘され、研究計画を1年延長し、①操作画面が見やすいスパイログラムを購入し、②プログラムの改良を行うことになった。しかし、①と②の準備を進めていたが、病院の方針により令和5年度から、当院の人間ドックが廃止となったため、当初予定の対象者が見込めず、②の途中でやむなく研究終了となった。
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