研究実績の概要 |
本研究では転写に関わる天然変性領域(IDR)の分子メカニズム、特にリン酸化が及ぼす影響を、分子シミュレーションによって検討を行う。これまでの研究で転写因子Ets1について明らかにされた「リン酸化ラッチ機構」(Kasahara, K. et al. (2018). Nucleic Acids Research, 46(5), 2243-2251) が他の転写因子にも見られるのか、その普遍性を検証する。まず(a)データベースよりヒト転写因子の配列および構造的特徴を大規模に検証し、リン酸化ラッチ機構を持ち得る転写因子を推定した。多数の候補を得ることができ、その成果を第9回生命医薬情報学連合大会においてポスター発表を行った。(b)そのうち2つの転写因子について分子シミュレーションを行い、IDRの構造アンサンブルを得た。(c)さらにその結果を検証するため、in vitro実験を計画中である。これに伴い、通常のシミュレーション手法では計算困難なIDRの解析を実現するため、新たなシミュレーション手法およびプログラムの開発を実施した。方法論、プログラムについては査読付き論文として報告を行った(Kasahara, K.. et al. (2020). Biophysics and Physicobiology, 17(0), 140-146; Higo, J. et al. (2020) Biophysics and Physicobiology, 17(0), 161-176)
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