研究実績の概要 |
メールやTwitterで行われているようなテキストベースのメッセージ交換では,相手の表情や仕草を見たり,声を聴いたりすることができないため,メッセージの意図(主にその感性的側面)を正確に捉えることができず,何らかの齟齬が生じることも少なくない.このような問題を回避するための一つの手段として,顔文字のような非言語表現が補助的に用いられることもあるが,その用法は直感的であり,顔文字がメッセージの感性的側面に対してどのような影響を及ぼしているのかについては不明な点も多い. そこで本研究では,140字以内の短い文章(いわゆるツイート)を対象に,ツイートの感情,顔文字の感情,顔文字付きツイートの感情という3種類の感情を多次元ベクトルとして定量的に扱うことで,顔文字から感じる様々な感情がツイートから感じる様々な感情にどのような影響を及ぼすかを定式化するとともに,その成果を申請者らが開発したツイート感情推測手法と統合することで,顔文字が付いたツイートからツイート投稿者の感情を推測するための統合的な基盤技術を確立することを目的としている. 令和2年度は,20代~50代の男性21,490人,女性21,731人の計43,221人が参加する大規模なアンケート調査を行い,Twitter上で一定以上の頻度で投稿/閲覧しているヘビー投稿ユーザ12,326人とヘビー閲覧ユーザ23,608人を選出した.さらに,ヘビー投稿ユーザ4,346人(男性2,202人,女性2,144人)を対象に追加のアンケート調査を行い,普段投稿しているようなツイート7,538個(一人あたり最大2個)と各ツイートに込めた感情に関する情報を収集した.なお,本研究で対象とした感情は「悲しい,嫌い,安心,怖れ,高揚,好き,喜び,驚き,怒り,恥ずかしい」の10種類であり,それぞれの感情に込めた感情の強さを0点~4点の5段階で点数化している.
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