研究課題/領域番号 |
20K12086
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
上善 恒雄 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 教授 (70388396)
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研究分担者 |
登尾 啓史 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 教授 (10198616)
大西 克彦 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 教授 (20359855)
埜中 正博 関西医科大学, 医学部, 教授 (90577462)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 知識共有 / Web3D / 医療オントロジー / WebUIシステム / VR HMD活用 |
研究実績の概要 |
脳神経外科医にご指導頂きながら,事例として脳腫瘍や動脈瘤を対象にデータベースを構築する方向で進めてきた.本件の特徴は3DCGによる脳モデルを中核として,脳疾患に関する外科的処置の方法とその経過を記録し,経験から得られた実例に基づく知識を蓄積して,同分野の医師間や次の世代に受け継いでいくことを目的としている. この目標に向けて,これまではWeb上の3DCGを扱うためのWebGLを利用した研究を辿って.3DCGの脳モデルの部分に対するポインティングとアノテーションのためのシステムを試作し,そのシステムを手術中にでも参照可能なようにLeapMotionという手のひらのゼスチャで操作できるようにした.また,医療オントロジーを参考にして,脳神経外科手術を想定したデータ間の関連を洗い出して,関連するデータのリンク構造を仮定してデータベースの基礎とした. ここでベースになる3Dの仮想脳モデルはフリー素材を大枠としているが,本研究グループによるDICOMデータの2次元画像を積層し,切り出した血管モデルも重ね合わせて血管関係の疾患についても記述できるようにした.しかし脳組織の内部についての細かい指定が難しいため,新しい操作インタフェースの開発に向けて脳のソリッドモデルを切断して内部構造までポインティングするための方法を模索している.その過程で,これまでThree.js ライブラリをベースとしたシステム開発を進めてきたが,本研究グループの関連テーマであるARを用いた手術支援との連携を深める目的もあって,ゲームエンジンであるUnityを利用するようになった.Unityの利用により操作インタフェース検討の自由度が高くなりVRゴーグルでの操作も可能になった. 最終年度に向けて,処置と結果という因果関係を軸にしたデータ構造を整理し,実際に役立つ事例を元にした事例で評価する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症拡大の影響は甚大で,医療現場での取材にかなりの支障を及ぼしており,医師の経験や主に手術室での事情を十分に反映できているとは言い難い. しかしWorld Wide Webによる医師同士の知識共有のためのWeb3D技術によるユーザインタフェースなどは想定していたシステムデザインの検討は進めることができている. 施術方法の記録と参照において,データ入力時にはVRゴーグルとポインティングデバイスも活用して,脳モデルの切断とポインティング,アノテーションの付与の方法を検討したが,この延長上で今後は手術シミュレーションにも発展させることも視野においている. 情報の参照段階では,通常のWebページの参照と同様の利用を想定はしているが,事情によっては手術中の参照も可能なように非接触のインタフェースでの操作も当初から想定して盛り込んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,社会の新型コロナ対応が安定していることもあり,なるべく医療現場での事情を汲み取った事例を収集し,医療現場に即した方法論を積み上げていきたい. そのアプローチとして3D情報の記録とその意味として時制と因果関係に考慮したデータベーススキームを再整理することで医療データベースのコアとしてまとめる. 脳神経外科手術では4kステレオカメラによるマイクロスコープ越しの操作や記録の普及が進んでおり,ICT機器とその拡大はとても自然な流れであるとの認識から,今後はVRゴーグルやARシステムのなる活用が期待され,手術対象が目視では判別しにくいものへのARによる情報重畳の精緻化や関連情報の参照など,今後もデータを活用が期待されるため,当初想定していた手術後のレポートシステムとしてのデータベースシステムを超えた手術記録方式に近づけて行きたいと考えている. 当分感染症拡大対策のため,現場での実用性について検証することは難しいと思われるが,その分思い切った方法の検討を研究分担者である医師の指導を仰ぎながら進めて行きたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大防止のために,医療現場での取材が進まず,その代わりとして医師が利用する専門書を購入し,基礎情報の参考にするに留まってしまった.また半導体不足により計算機リソースの拡充もままならず持ち越しとなった.学会発表などや雑費などの経費は自費及び他予算で賄った. 今後の使用計画としては,VRによるインタフェース検討で計算量の大きい方式を採用したため,手元PCでは開発が困難になってきたため,グラフィクス能力の高いGPUなどの計算機の早期導入を予定しており,それが支出の大半になる.
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