研究課題/領域番号 |
20K12096
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小島 一晃 帝京大学, 理工学部, 講師 (30437082)
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研究分担者 |
三輪 和久 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90219832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | computational thinking / 計算機モデル / モデル構築学習 / 問題解決 |
研究実績の概要 |
近年の教育研究では「計算機科学者のように思考する」ことを意味するComputational Thinking (CT)に注目が集まっている.CTに唯一の明確な定義はないとされるが,「(人間と計算機を含む)情報処理エージェントが効率的に実行可能な形式で解法が表現されるように,問題と解法を定義する思考過程」という説明で概ね了承されている.情報分野の専門家に限らず,CTは問題解決一般において,誰にとっても重要なスキルとなっている.国内外におけるCTの育成は初等中等教育が対象の中心となっているが,高等教育を対象としたCTの育成方法も必要であると考えられる.本研究では,高等教育を対象として,人間の問題解決を再現する計算機モデルを構築することを通じた学習者のCT促進のフレームワークと,学習支援手法の考案を行う.これは,認知科学の分野において計算機科学者が実践してきたアプローチである. 2020年度においては,学習フレームワークの考案を志向して,2つの実験調査を行った.1つ目は,プロダクションシステムを用いて一般大学生に単純な計算機モデルを構築させる経験をさせ,この経験に基づいて問題解決における思考スキルについて考えさせる実験調査であった.調査の結果,問題解決の暗黙的な思考と,情報を表現することの重要性を認識させることはできたものの,計算機モデルの構築,特にモデルの問題表現の考案において大学生が困難さを示すことが判明した.2つ目は,人間の情報処理過程の計算機モデルの動作を観察させることで,情報処理プロセスに注目して人間の認知過程を説明させる実験調査であった.調査の結果,モデルの観察を通じて情報処理プロセスに基づく認知過程の説明構築が促進されることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度において実施した実験調査により,計算機モデルの利用を通じて問題解決過程の表現を促進できる可能性が示唆された.この実験調査で用いた手法と獲得された知見は,計算機モデルを用いたCT促進の学習フレームワークの基礎として利用できる.また,情報分野の専門家でない一般大学生が問題表現の考案に困難さを示したという結果も含め,CT促進の学習フレームワークとその学習支援手法の設計の基礎データの獲得に成功したため,2021年度は当初計画通り支援手法の考案と実現のステージに進むことができる.
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今後の研究の推進方策 |
次のステップとして,2021年度には計算機モデル構築を通じたCT促進の学習支援手法の考案ならびに実現を行う.学習の途上でモデルを構築する段階では,CTの思考スキルが不十分であることが原因で,初学者が失敗するケースは事前に想定されていた.この失敗は,モデルにおける問題表現の理解や設計にあることが明らかになったため,表現のスキルに焦点を置いた支援を設計し,学習支援システムを構築する.同時に,この学習支援システムを用いた実践授業の方法についても設計を進め,2022年度において授業実践の展開を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者との研究打ち合わせや,国内外の会議参加を通じた情報収集のために旅費を支出する予定であった.しかし,コロナ禍によってこれらが全て中止となり,オンラインでの打ち合わせや会議参加に振り替えられたため,旅費の支出がなくなった.関連研究者との情報交換が十分にできない状況にあるため,いずれ出張が可能になれば,そのために支出する.
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