本研究はネパール山間部の学校を具体的なターゲットとして,発展途上国の都市部と過疎部の教育格差解消のためにe-Learningの有効性に着目した。しかし,同地域は通信インフラ環境が脆弱で不安定であり,また雨季の落雷などや乾季の電力不足などもあり、常に安定した通信環境が求められるe-Learningを十分に活用できない課題を抱えている。これに対して,我々は①学校ごとの稼動独立性を向上させることと、②ネットワークを介した学校間協調学習環境の環境全体としての稼動可能時間を可視化することの2つを新たな目的とし研究を進めてきた。2020年度からのコロナ禍により、2020年度及び2021年度は開発したユニットを現地で使用しての実験も進められず進捗が停滞したが、最終年度である2022年度において、8月にネパール現地を訪問し、現地に設置し遠隔で使用していたものの、故障により日本から状況を確認出来なくなっていた機器の状態確認を行った。故障などの遠隔監視が停止した原因を確認し、帰国後に復帰のための準備を開始した。12月に再度ネパールへ赴き、新たに実装したユニット機器と交換を行い、再度利用可能な状態に復帰させることができた。また、延期となっていた現地と日本の間でのコンテンツ共有の実験を行うことができ、学校間協調学習システムの基盤については完成に至った。しかし、当初の研究計画で予定していた、現地の教育内容に即した具体的コンテンツや支援アプリケーションの開発までは着手に至らず、本研究の研究期間内に完了することができない結果となった。
|