研究実績の概要 |
本研究課題はクラシックピアノ音楽を対象に,楽曲構造を中心とした楽譜情報から演奏表情の傾向を抽出し演奏表情モデルを構築することを目的としている.令和3年度はこれまで楽曲の認知モデルとして楽曲構造の解析に用いた GTTM (Gen- erative Theory of Tonal Music) および TPS (Tonal PiTch Space)とは異なる観点での音楽理論である暗意実現モデル(Implication-Realization model)に基づき演奏表情の解析を行なった.本手法では楽曲の各声部を連続する3音の音符からなる組の列としてとらえ,その高低の関係で数種類のシンボルに抽象化し,それらが楽曲を演奏する際の意識的・無意識的な情動を表現していることを解析する.従来の解析は精密であるが一方では音楽理論を正確に扱う必要があるのに対して本手法での楽曲の解析は非常に容易である.この手法を用いた演奏の解析の結果を従来の手法による解析と比較したところ,おおむね同程度の結果を得ることができた. 本研究成果はシンガポールで主催されオンラインで開催された国際会議The 9th International Conference on Computer and Communications Management(ICCCM 2021)において, Mizutani, T. and Sasaki S.: A Linear Regression Analysis of Musical Expressions using the Implication-Realization Model, The 2021 9th International Conference on Computer and Communications Management (ICCCM ’21), July 16-18, 2021, Singapore, Singapore. ACM, New York, NY, USA, pp. 85-91. https://doi.org/10.1145/3479162.3479175 として公表された.
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