本研究は,特徴の異なる複数のゲームに対して,(1)プレイヤの弱みや価値観などを推定する技術を確立すること,(2)それらの結果を用いて,(2a)相手としてプレイする,(2b)仲間としてプレイする,(2c)指導したり問題を作る,以上のための技術を開発することを目指した.2022年度(3年目)は,これまでに取り組めなかったいくつかのゲームと目的の組み合わせについて手法の提案・実装・評価を行った.以下に,特に良い成果がでたものについて簡単に説明する. (1)に関連して,囲碁において,人間対AIの試合が好ゲームと評価されるためにはどのようなゲーム展開や相手の挙動が必要なのか,これまでは定性的な議論しか行われてこなかった.そこで,対局後にgood/badのボタンを押して評価が行える実際の囲碁webサイトのデータを用いて,何が重要なのかを分析した.その結果,棋力が同程度またはAI側がやや強いくらいが最も好まれること,AI側が弱い場合でも適切な投了タイミングが重要であることなどが分かった. (2a)に関連して,好ゲームを演出する囲碁プログラムを作成した.正確な形勢判断を行える既存プログラムと,着手の人間らしさを判定できる別の既存プログラムを組み合わせることで,適切な手加減と人間らしさ(手加減がわざとらしくないこと)を両立した. (1)および(2b)に関連して,人間プレイヤを“活躍”させる協力型ゲームの味方AIを開発した.協力ゲームにおいて人間は「自分が敵を倒したい」「むしろサポートを楽しみたい」「チームが勝つだけでなく自分は死にたくない」などさまざまな副目的を持つ.これを行動から推測し,その副目的を達成できるようにAIが支援することで,満足度を向上させることができた. (2c)ガイスターの問題作成についても成果が出ているが,ジャーナル論文が1年近く査読中(1回目が返ってこない)のため内容公表は控える.
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