研究課題/領域番号 |
20K12122
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中村 貞吾 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (40198221)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 組合せゲーム理論 / 囲碁 / 局面解析 / 解説 |
研究実績の概要 |
人間が対戦型思考ゲームをプレイする際,プレイヤは相手の着手からその意図や戦略を見い出してそれに応えて着手を行なっており,対局は着手を通じた言語的コミュニケーションであると考えることができる.本研究は,思考ゲームの中でも特に囲碁を対象として,局面を言語的に記述し,さらに局面を数理的に解析した結果を意味として与えることで,ゲームと言語との関わりを明らかにすることを目的とする.人間がゲーム局面を理解してプレイするためには,盤面全体を漠然と画像的に眺めるのではなく,盤上の数々の特徴をとらえた上で,それらの関連性を認識して論理的に積み上げていく過程が重要であり,これを言語モデルになぞらえてモデル化することを目指しており,自然言語を用いた棋譜解説など,ゲーム局面から自然言語表現への変換は重要な課題である. 囲碁局面や着手を言語的に記述するにあたって,ある着手が局所的には同じ配置のように見えても,周囲の状況や打たれた手順によって異なる囲碁用語が使い分けられるため,着手の役割・意図やゲームの内容を正しく伝えるためには,囲碁用語を適切に使用する必要がある.我々は,着点を中心とした部分領域内の配置と手順情報に加えて盤面全体の解析から得られる勢力情報がその部分領域に及ぼす影響を考慮したニューラルネットワークを構築し,解説記事中の囲碁用語を用いて機械学習することによって適切な囲碁用語の選択を行なった.また,対局中の各着手の中から解説すべき着手を選出するために,着手前と着手後の局面の状況の変化や,探索量の変化にともなう着手評価の変動に着目して特徴的な着手を判別する手法を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで,囲碁局面や着手を適切な囲碁用語を用いて記述するための用語選択手法と特徴的な着手の選出手法の開発を中心に研究を行なってきたが,個々の着手の表現をもとに,新聞や雑誌の観戦記で使用されている局面表現や解説文の表現パターンに基づいた解説文生成を行なうまでには至っていない.また,囲碁の局面を部分局面に分割し,個々の部分局面を囲碁AIを用いて解析する手法について検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
AlphaGoの成功以降も囲碁AIの実力は年々進歩し,今やオープンソースの囲碁AIを用いて正確な局面評価が行なえるようになった.そこでの手法は,盤面全体を入力としてそれを直接評価するものであるが,人間がゲーム局面を理解するためには,全体局面を部分局面に分解して個々の部分局面を理解した上で,それらの関連性を認識して全体局面の理解へとつなげる過程が必須である.組合せゲーム理論による局面解析では,各部分局面が独立していることが前提となるが,実際の囲碁局面では,部分局面同士が相互に依存関係を持っていたり,ひとつの着手が複数部分局面に効果を及ぼすことは稀ではないので,それを組合せゲーム理論の中で扱うために,囲碁における部分局面同士の連合のパターンを分析や,差分ゲームに基づく解析手法の検討を行なう.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響はおさまりつつあるが,まだコロナ前の状況には戻りきっていないことに加え,研究の進捗も遅れており,研究発表等も十分に行えていないので,出張旅費として計上していた予算を十分に使えていない.研究期間の延長にともない,残予算を物品費20万円,旅費30万,人件費・その他10万として使用する予定である.
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