研究課題/領域番号 |
20K12128
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
井上 亮文 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 准教授 (50386778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゲーム体験 / エンターテインメント / 仮想現実感 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、仮想世界中に物体の形状と常に同じ形状へと変形するインタフェースの開発である。これに加えて、変形を通じてVRエンタテインメントの体験を加速させるソフトウェア表現を確立することである。これらを4年計画で実施する。2年目は、新たな構造を持つ変形インタフェースを設計した。また、前年度に実施したソフトウェアによるぬいぐるみの変形表現を発展させた。 新たな変形インタフェースは面形状のものである。これまで開発していたインタフェースは棒状で、その対象が剣や銃などの武器を想定していた。これに対し新インタフェースは盾のような防具に対応するものである。本年度は、VRエンターテインメントにおいて盾のような防具が変形する場面およびそれがゲーム体験に及ぼす影響について考察し、変形インタフェースの基本構造の設計をした。本研究に関する成果は、国内シンポジウム1件、国内研究会発表1件である。後者の発表では情報処理学会DCC優秀賞を受賞した。 ソフトウェア表現では、前年度に開発したぬいぐるみの仮想的な変形を発展させた。本手法では、現実世界で人がぬいぐるみを変形させた際、その柔らかさや愛らしさを増減するCG表現を仮想世界でユーザに提示する。例として、柔らかさを強調する場合、ユーザが現実世界でぬいぐるみを3cm押しつぶすと、システムは仮想世界のぬいぐるみのCGを5cm変形させる。また、ユーザが現実世界でぬいぐるみを撫でると、仮想世界ではぬいぐるみが身体を揺らして喜びを表現する。本研究に関する成果は国内シンポジウム1件、国際会議1件である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度、新型コロナウイルスの感染拡大で施設が利用できずに着手できなかったハードウェアの開発にようやく着手することができた。検討を重ねた結果、あらゆるものに変形可能な機械的構造を追求するよりも、特定アイテムの変形がゲーム体験に与える影響を調査し、それを考慮した変形機構を実現していく、というアプローチを明確にすることができたのが最大の成果である。当年度は主に設計のみだったが、次年度は試作に着手する。将来的には武器型変形インタフェースと防具型インタフェースの両方を使用したゲーム体験の評価を実施したいが、従来の成果である棒状の変形インタフェースは過度の使用で一部の機能が動作しなくなった。この点を懸念事項とし、復旧作業を同時並行的に実施したい。 ソフトウェアによる変形を表現するシステムの開発は順調に進んでいる。当該年度はまだ新型コロナウイルスの感染拡大が続き、人が参加する評価実験の実施が難しかった。その点を考慮し、機能の充実に注力し、システムの完成度を高めることができた。現時点では社会的情勢も改善し、被験者が評価実験に参加しやすいようになったため、今後は評価実験に注力していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
ハードウェア変形に関しては、面状の構造をもつインタフェースの実装と、それを用いたゲーム体験の評価を実施する。繰り返し検討をした結果、盾型インタフェースの詳細な設計が決定したため、まずはその具現化を目標とする。購入機材としては、加工材・センサー・アクチュエータなどを予定している。一方で、このインタフェースを評価するためには、それを利用するVRゲームが必要である。このゲームの設計・開発も同時並行で進める必要がある。購入機材としては、ソフトウェアのライセンスやCGパーツなどを予定している。 ソフトウェアによる変形表現に関しては、開発したシステムを用いた評価実験を実施し、その成果を投稿する。ソフトウェアによる柔らかさの操作を評価する実験手順を決定した上で、感染防止を徹底したユーザ評価実験を実施する。購入機材としては、実験システムを動作させるコンピュータ、物理的な変形量を定量的に求めるための計測機器類を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き、次年度使用額がある理由は、投稿したすべての学会がオンライン開催となり、旅費・宿泊費・参加費の支出がほとんどなかったためである。本来であれば、国際会議に50万(旅費20+参加費5が2名分)、国内発表3件で25万程度(岩手でのシンポジウム3人計21万、研究会3万)の出費があった。この額は未使用額の合計とほぼ一致しており、予定としては問題がなかったことがわかる。 このような背景もあり、採録された国際会議論文を、費用を払ってオープンアクセスにすることも検討した。しかし、プレプリント公開が可能なこと、学会側の手続きにミスがあり電子図書館への登録手続きが遅れていることなどを考慮し、最終的には支出を見送った。 幸い、現時点では国内外の移動が緩和される方向にある。次年度も国内外の学会に投稿を多数計画しているため、まずはその旅費・参加費への利用を目指す。社会情勢の変化によりそれが難しい状況になった場合は、懸念事項として挙げた棒状インタフェースの修復に必要な機材の購入を検討する。
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