研究課題/領域番号 |
20K12130
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山西 良典 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (50700522)
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研究分担者 |
西原 陽子 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (70512101)
中村 聡史 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (50415858)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 読書支援 / 情報抽出 / ストーリー情報の提示インタフェース / 電子書籍 |
研究実績の概要 |
本研究では,電子書籍上での作事コンテンツを対象として,映像作品のようなストーリー情報の提示によって読書意欲の向上と内容理解の促進を実現する技術の開発を行っている.映像作品では,あらすじ,次回予告,振り返りといったストーリー情報を適宜提示することによって,作品に対する視聴意欲の向上や内容の理解を促していると考えられる.この情報提示方法を,電子書籍に取り入れることで活字コンテンツのエンターテイメント性を向上させ,活字離れ問題の端緒とすることを狙っている. このためには,まずエンターテイメント性が高いと言われている映像作品においてどのようなストーリー情報が提示されているのかを分析した.つまり,「あらすじ」「振り返り」「次回予告」といった演出的な情報提示において,ストーリー中からどのような情報が抽出され,どのように編集されているのかを分析する必要がある.このうち,次回予告については,未読・未視聴の部分を提示することで一般的にはその後に対する継続した読書・視聴意欲が下がるとされている一方で,心理的負担が大きな情報(例えば,登場人物の死亡など)についてはあらかじめ伝達することで,心理的負担を和らげてストーリーの理解に集中できる可能性がある.また,抽出された情報の提示において,エンターテイメント性を担保しつつ内容理解を促すためには,情報をどのように提示するかを左右するインタフェースデザインについても検討する必要がある. これまで,1)あらすじや次回予告を自動生成するための映像作品の分析,2)次回予告における未読情報の提示の影響,3)ストーリー情報の提示方法,についてそれぞれ基礎的な知見や技術を明らかにした.これらの結果について,国内研究会10件の発表を行った.また,これらの知見や技術をもとに,産業的な展開をにらんで,ストーリー情報提示に関する技術1件の特許出願を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体構成は,映像作品において提示されるストーリー情報の分析,ストーリー情報の抽出のためのアルゴリズム設計,ストーリー情報の提示インタフェースの開発に分解される.現在まで,1)あらすじや次回予告を自動生成するための映像作品についてのデータ分析,2)次回予告における未読情報の提示の影響,3)ストーリー情報の提示方法,といった基礎的な知見や技術を明らかにした.また,これらの情報をもとに,産業的な展開をにらんだ特許出願を行った. ネタバレを避けて視聴意欲を向上させながら,内容理解を補助していると考えられる映像作品のエピソード冒頭のあらすじの分析を行った.その結果,映像作品のエピソード冒頭部分で過去のストーリーを参照するとき,ストーリー全体の冒頭部分,および,前回エピソードの終盤で出現したセリフは作品によらず参照されることが明らかになった.また,予め得られた部分要約の情報をもとにして,未読部分の要約を行う技術を開発し,次回予告生成の実現の方向性が定まった.これらの研究成果を組み合わせ,ユーザの読書・視聴に応じたストーリー情報の要約技術として特許出願を行った. 次回予告として提示すべきストーリー情報に関しては,ネタバレが与える悪影響のみならず,心的負担の軽減という良好な影響についても分析を行った.ユーザが嫌う対象の出現をあらかじめ伝えることで,作品全体への心理的負担を軽減する工夫についても基礎的な調査を行った. どのようなインタフェースでストーリー情報を提示することが,内容理解を促進しつつもネタバレによる読書意欲の低下を防げるかについて検討を行った.多くのストーリーは,キャラクター同士のやりとりによって展開していくことに着目した.キャラクターに関する情報の提示方法についてプロトタイプを開発し,内容理解とネタバレ防止に関する効果を検討した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度以降は,2020年度に特許出願した技術を検討したストーリー情報提示インタフェースと組み合わせた実装を目指す.これにより,作品をユーザに読んでもらい,エンターテイメント性を評価するユーザ評価実験が実施可能になる.取り入れた知見と技術の中で,どの要素が映像作品におけるストーリー情報提示のエンターテイメント性に大きく寄与しているのかについても分析する. 一方で,研究成果の国際発信状況においては,新型コロナウイルス感染拡大防止のために,芳しくはない.国際会議等の開催状況についても不透明な部分が多く,十分に発表計画を立てられない状況にある.2021年度後半以降には世界的に安定することを期待し,2021年度後半以降での国際的な発信を目指す.また,それに合わせて,海外研究協力者との議論も実施して,国際的な研究発信を計画することとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け,当初計画していた国際会議での発表や海外研究協力者との打ち合わせなどが軒並み中止されることになった.また,国内の研究活動においても,多分に研究活動自体が制限を受けることとなり,プログラム開発に影響が出た.これに伴って,発表経費や開発環境整備費用等に831千円の余剰が生じた. 2021年度には,これらの余剰金をもとに計算機環境を充実させ,研究計画の加速化をねらう.
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