研究課題/領域番号 |
20K12132
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平野 大輔 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30790977)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 東南極 / 白瀬氷河 / 氷床海洋相互作用 / 暖水流入 / 棚氷底面融解 |
研究実績の概要 |
近年,南極氷床の質量損失が加速しており,全球海水準の上昇が懸念されている。氷床質量損失を加速させている主な要因は「周囲の海」による棚氷底面融解の促進であり,精度の高い海水準変動の将来予測には氷床質量損失に対する海洋の本質的な役割の理解が不可欠である。令和2年度には,東南極・白瀬氷河域における一連の氷床海洋相互作用について,観測および数値モデルの融合研究を推進した。
(1)リュツォ・ホルム湾の湾口から白瀬氷河舌前面に至る広域海洋観測データの解析結果を軸として,数値モデルや測地・雪氷学分野との融合研究を行い「白瀬氷河舌の下に非常に温暖な沖合起源の暖水が流入することで顕著な底面融解が生じ,その融解強度は卓越風による暖水流入量の変動を介してコントロールされる」というメカニズムを提唱した論文が国際学術誌に掲載された(Hirano et al., 2020, Nature Communications)。
(2)(1)の現場観測データを用いて比較検証した高解像度の海洋・海氷・棚氷結合モデル結果の解析により,白瀬氷河域における顕著な氷床海洋相互作用をもたらすプロセス・要因を明らかにした(Kusahara, Hirano et al., 2021)。沿岸で卓越する東風やリュツォ・ホルム湾近傍の上部大陸斜面域に形成されるジェット流の季節変動が湾内への暖水流路や流量を決定しうることがわかった。また,通常湾内の広域を覆っている厚い定着氷が,断熱材として作用することでローカルな湾内の海氷生産を抑制し,より暖かい水が湾内へ流入しやすい状況を作り出していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の点を勘案し,おおむね順調に進展していると判断した。 ・観測および数値モデルの融合研究の実施により,東南極・白瀬氷河域における顕著な氷床海洋相互作用の実態やそのメカニズムに関する知見が得られ,国際学術誌に論文が掲載された。 ・これに加え,海洋化学・生態学分野との学際的な研究への進展もあり,当初計画段階で想定していた以上に研究成果の波及がある。
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今後の研究の推進方策 |
LH湾沖合域の海洋観測データ,海氷域もカバーした欠損のない海面力学高度データおよび数値モデル結果を統合し,LH湾内・沖合の海洋循環(特にウェッデルジャイヤ)の時空間変動特性と沖合暖水の流路・流量変動との定量的な関係性を調べる。さらに,アイスレーダー観測による底面融解強度の解析も行い,沖合と白瀬氷河域での変動を関連付けるプロセスとして,顕著な白瀬氷河舌の底面融解強度をコントロールする「沖合からLH湾内に内在する背景要因」を特定し,白瀬氷河域における氷床海洋相互作用の包括的な理解を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症拡大の状況により,R2年度は当初予定していた出張の大半をキャンセルせざるを得なかった(旅費)。また,購入予定であった観測測器について,研究協力者が保有している同測器で賄うことができたため,追加調達が不要となった(物品費)。これらの変更に伴い,次年度に繰り越すこととなった。
現時点では,R3年度も予定通りの出張は見込めないため,R2年度の旅費と物品費で余剰した分については,R3年度に実施予定の現場観測で使用する測器の追加調達に充て,観測データの取得促進を図る予定である。
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