研究課題/領域番号 |
20K12133
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
幸塚 麻里子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60706365)
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研究分担者 |
鈴木 庸平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00359168)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 化石DNA / ゲノム解析 / 地球温暖化 / 海洋生態系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近過去の急激な地球温暖化でどのように日本海の海洋生態系が変化するか?について、従来法では化石やバイオマーカーとして記録が残らないため復元不可能だった生物相を化石DNAの次世代DNA配列解析により種レベルで明らかにすることである。化石DNAを用いた研究に関しては、先行研究で新潟県沖の堆積物を対象に、10万年前までの海洋生態系の魚類を含む生物相の種レベルでの復元に成功している(Kouduka, Suzuki et al. 2017)。そこで、本申請では、同様の手法を平成26年度に海洋資源調査船「白嶺丸」で取得済みの山形県沖の海洋堆積物に適用した。山形県沖の海洋掘削コアには、約1万年前の急激な温暖化で無酸素化した際に形成した暗色の葉理層が、その前後の生物擾乱を受けた堆積物と連続して含まれる。 令和2年度は、18S rRNA遺伝子を用いた約1万年前の生物相の復元を実施した。試料には、約1万年前の山形県沖の海洋堆積物に対し、1 cm間隔で暗色の葉理層とその上下の堆積物をサブサンプリングしたものを用いた。同サンプルから抽出した化石DNAを対象に、真核生物全般を網羅したユニバーサルプライマーを用いて18S rRNA遺伝子を増幅し、ライブラリーを調整した後、次世代DNA配列決定装置(Illmina社製MiSeq)を用いた解析を実施した。次に、得られたRawデータを対象に、バイオインフォマティックス解析(キメラチェック、クラスタリング処理、種分類解析)を行い、過去の海水中の生物相を復元した。暗色の葉理層に入る直前から終わるまで調べたところ、暗色の葉理層の中では一次生産者の珪藻で赤潮の原因として知られている分類群が増えており、葉理層が終わる境目では、無酸素水塊に生息する藻類が増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、コロナ禍での緊急事態宣言等の影響で、実験室等での作業が困難になる状況が生じた。そのため、予定していた18S rRNA遺伝子を用いた約1万年前の生物相の復元に関する解析の一部を次年度に行うことになった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度以降は、当初予定していた「化石DNAを用いた生態系復元法の妥当性評価」と「プライマーの偏りのない生物相復元の試み」と初年度の「18S rRNA遺伝子を用いた約1万年前の生物相の復元」に関する解析の残りを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、コロナ禍による緊急事態宣言等の影響で、実験室での作業が困難な期間があった。そのため、研究に若干の遅れが生じたため、一部を次年度に使用する形となった。次年度使用額の一部は、研究の遅れを取り戻すために、人件費として用いる。
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