研究課題/領域番号 |
20K12138
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
飯村 康夫 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (80599093)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌炭素 / 炭素循環 / 地球温暖化 / プライミング効果 |
研究実績の概要 |
地球温暖化問題を背景に土壌炭素の温暖化応答に注目が集まっている。現在のところ、温暖化に伴う土壌炭素応答研究の大多数は直接的な気温上昇に伴う表層土壌炭素の分解速度変化に関するものであるが、実際には気温上昇も含めた易分解性有機物の供給量増加や窒素沈着量の増加など、複合的なインパクトを深層土壌も含めて時空間的に考慮する必要があり、今後の大きな課題となっている。この課題を解決する鍵となるのが外部インパクトに対する既存の土壌炭素分解速度変化“プライミング効果(PE)”である。本研究では気温や窒素沈着量を時間と共に段階的に増加させ、実際に植物も栽培しながらPEを経時的に定量し、且つ、それらの規定因子を明らかにすることで、温暖化に伴う大気-植物-土壌の相互作用に基づく真の土壌炭素応答メカニズムの解明を目指すものである。本年度は日本の代表的な土壌タイプの一つであり炭素含量が多い「黒ボク土」や世界にも広く分布し炭素含量が比較的低い「未熟土」を用いた培養試験を行った。2種類の土壌を25℃でCO2放出量が平行化するまで培養を行い、その後、35℃に昇温した。昇温と同時に一方にのみトウモロコシ播種と無機態窒素添加を行った。すなわち、コントロール(土のみ)と植栽区(土+トウモロコシ+無機態窒素)を2種類の土壌で作成した。培養期間は50日とし、実験は3連で行った。培養期間中に放出されたCO2量をもとに25℃~35℃における各処理区の見かけのQ10(気温が10℃上昇した時にCO2放出量が何倍になるかの指標)を25℃のコントロールを軸として算出したところ、黒ボク土では有意差はなくどちらも2.3だった。一方、未熟土ではそれぞれ1.5と1.9となり、見かけのQ10は植栽区で有意(0.1%水準)に増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度開始時から続く新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた野外での調査や室内実験等の5割程度は実行に移すことができなかった。そのような中でも室内における培養実験は進めることができたため「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は年度始めから予定していた野外での調査や室内での培養実験を開始できているため、おおよそ計画通り研究を進めることができる見込みである。また、2020年度に行えなかった内容についても改めて開始できているのでこれまでの遅れを取り戻せる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定だったCO2濃度制御付人工気象機の価格が値上げされたことと、配分額がやや減ったことが相まってCO2濃度制御付人工気象機の購入を見送った。その代わりに一般的な恒温槽にLED照明やCO2標準ガス装置を取り付け、代替品を2台分自作する予定である。これにより、当初計画していた研究内容を加速できると考えている。
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