研究実績の概要 |
福島県においては淡水魚の放射性Cs汚染が長期化しており、原発近傍では出荷制限が続いている。環境内から淡水魚に取り込まれる放射性Csの由来を明らかにすることは、淡水魚の放射性Cs 濃度推移の予測精度を向上させ、内水面漁業再開の将来展望を得るために重要である。本研究では、淡水魚のDNAによる食性解析により、餌となる生物からの放射性Cs移行を明らかにし、淡水魚への放射性Cs 取り込みに重要な餌生物と移行経路を評価する。
2023年度の成果として次のことが明らかになった。2017-2022年に福島県真野川、太田川、猪苗代湖、はやま湖において採集したヤマメ・ウグイ・アユ・ギンブナ・ウグイなど複数の魚種の淡水魚を解剖し、筋肉部と消化管内容物の放射性セシウム濃度を測定した。この結果、淡水魚の消化管内容物と筋肉部の放射性セシウム濃度は正の相関を示したが、同じ流域で採取された淡水魚であっても、消化管内容物の放射性セシウム濃度は、淡水魚の食性によって大きく異なることが分かった。さらに、消化管内容物と筋肉部の放射性セシウム濃度の比を、被食捕食関係における栄養段階間の放射性セシウム移行係数(Trophic transfer factor, TTF)として計算したところ、この値は淡水魚の体サイズと正の相関があった。このことは、大きな魚ほど魚食の傾向があり、餌に含まれる放射性セシウムの生物利用性が高いこと、また体サイズに依存した淡水魚の代謝がTTFに大きな影響を与えていると考えられた。
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