研究課題/領域番号 |
20K12142
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
谷川 朋範 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20509989)
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研究分担者 |
豊田 威信 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (80312411)
豊田 隆寛 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (90450775)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射伝達モデル / 気候モデル / アルベド / 反射率 / 放射観測 / 積雪 / 海氷 |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画にもとづき,1.現地調査に基づく海氷の光学特性の解明と,2.大気-積雪-海氷系の放射伝達モデルの開発に取り組んだ. 1.について,典型的な季節海氷域である北海道サロマ湖をテストサイトとして,2月に海氷放射観測,海氷物理観測,海氷上積雪断面観測を実施した.放射観測では,狭帯域(分光)アルベドの他,広帯域アルベド,海氷透過率の測定を実施し,海氷アルベド物理モデルの開発・検証に必要なデータの取得を行った.海氷物理観測,海氷上積雪断面観測では,海氷上積雪深,積雪密度,積雪粒径,積雪不純物(不溶性固体粒子)濃度,海氷構造,塩分,気泡サイズ分布,クロロフィルa濃度を測定し,海氷の物理・光学特性の知見の集約とともに,放射伝達モデルの入力値となるデータを取得した.現在は測定データの整理,放射伝達モデルの入力値を精査しているところである.なお一部の海氷放射観測データをまとめ,Journal of Quantitative Spectroscopy & Radiative Transfer誌に論文を投稿した(論文投稿中).2.について,大気-積雪-海氷系の放射伝達モデルの開発に着手した.光の伝搬を放射伝達方程式に基づき計算し,大気上端・地上での波長別上向き・下向き放射フラックス,アルベド等の計算(出力)が可能になった.現在,放射伝達モデルの検証を1.で得られた観測データを用いて実施しているところである.この他,海氷上の積雪の放射計算を行う際に使用する光散乱粒子モデルを構築し,Journal of Geophysical Research誌から論文を発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道サロマ湖での海氷放射観測,海氷物理観測,海氷上積雪断面観測を順調に進めることができ,海氷の光学特性の決定に必要なデータを取得することができた.また,海氷アルベド物理モデルの開発・検証に必要なデータの取得だけでなく,狭帯域,広帯域アルベドの解釈に必要な反射率,偏光度の測定も実施することができ,海氷の光学特性に関する重要な知見がえられつつある.海氷の放射伝達モデルの開発に着手し,波長別アルベドなど放射量の計算が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき,引き続き放射伝達モデルの開発・高度化を進めるとともに,海氷アルベド物理モデルを開発に取り組む予定である.なお,当初,来年度の北海道サロマ湖での現場観測は予定してなかったが,様々な海氷の光学特性や物理特性を調べるため,来年度,もう1度現場観測を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
観測装置の簡素化,及び消耗品購入の効率化,また,新型コロナウイルスに関連して国内学会が中止となり,物品費と旅費に余剰金が生じた.この余剰金は次年度実施するサロマ湖観測旅費(国内旅費)および観測消耗品(物品費)の購入に充当する.
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