研究課題
本研究は、既往研究の観測では評価が困難であった、森林伐採に対する土壌(表層の有機物層を含む)中の炭素循環の応答機構の解明と、国内の伐採区からの炭素(二酸化炭素(CO2))放出量の評価を目的としている。そのために、令和2年度および3年度に、土壌中炭素循環を予測するモデルに森林樹木と下草のバイオマス(炭素)量の計算過程を組み込むことで、森林内の炭素循環を計算する数値モデルを構築した。同時に、国内の皆伐・植林サイトで実施している気象及び炭素循環観測を継続実施することで、様々な解析に利用できる森林内炭素循環データセットの拡充を進めた。令和4年度は、前述のモデルを皆伐・植林サイトに適用することで、モデルの検証と皆伐・植林に伴う炭素循環の変化を解析した。モデル計算は、皆伐以前の天然林について、植生(樹木及び下草)、表層の有機物層、及び土壌における炭素量の観測値を概ね再現した。地表面からあるいは森林上端からのCO2放出フラックスについても、モデル計算は観測値を概ね再現した。計算結果から、皆伐・植林後には、皆伐時に表層有機物層に供給された植物残渣及び土壌中に取り残された根リタ―が分解されたことで、皆伐・植林サイトが一時的にCO2の放出源となったことが示された。一方、皆伐後に下草(ササ)が繁茂したことで、下草によるCO2固定量が増加し、その結果、皆伐後3年程度で当サイトがCO2の吸収源に戻ることが示された。これらの計算結果は、当サイトにおける炭素循環の報告値と一致するものであり、これにより開発したモデルが皆伐・植林による炭素循環変化を予測できることが示された。今後は、モデル計算を継続し、皆伐・植林サイトのCO2放出あるいは吸収量の長期予測を行うとともに、森林伐採に伴う土地利用変化(森林を草地に転用等)を模擬した計算を実施することで国内の伐採区からのCO2放出量を評価する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件)
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