研究課題
海洋に存在する溶存態有機物(DOM)は、地球表層における最大級の有機炭素貯蔵庫である。近年、海洋細菌が難分解性DOMを生成することによる「微生物炭素ポンプ」が、海洋への長期間の炭素隔離機能として注目されている。本研究は、海洋細菌が生成する細胞外膜小胞が生物分解に対して比較的安定であることに着目し、海洋細菌が生成する膜小胞を介した微生物炭素ポンプの炭素フローとその動態について解明を進めた。これまでに、海洋細菌の自然群集を用いた培養実験を行い、海洋細菌による膜小胞の生成量と分解性を調べた。約2か月の培養実験において、細菌由来有機物の行方を解析した結果、細菌由来有機物の大半は無機化もしくはDOMとして残存することが示されたが、約10%はMVを含む微細な粒子として残存することが示唆された。さらに本年度は、沿岸海水から海洋細菌の単離株4種を確立し、それぞれの株から生成される膜小胞の生成量とサイズに関する特徴を確認した。その結果、膜小胞の生成量は細菌の種によって大きく異なることが示された。これらの結果から、海洋細菌はDOMだけでなく膜小胞の生成を介して、微生物炭素ポンプに寄与していることと、その炭素フローは細菌の種に依存する可能性が示された。
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Journal of Geophysical Research: Atmospheres
巻: 127 ページ: e2022JD036690
10.1029/2022JD036690