研究実績の概要 |
(1) 現地・衛星データの収集と解析。本年度は引き続きPhenoCamサイト及びPENサイトの定点カメラデータを整理し、サイトごとにフェノロジーメトリクスを算出し、衛星プロダクトの検証データベースを構築した。研究対象地におけるMODIS, GCOM-Cなど衛星データのほか、高時空間分解能を持つPlanetScopeデータの解析も行った。 (2) 全球植生フェロノジープロダクトの開発。GCOM-Cの地表反射率衛星データに基づき、新たな相対閾値法を開発し、全球植生のフェロノジーを推定した。検証の結果、植生タイプの異なるPhenoCamとPENサイトにおいて、GCOM-Cに基づく植生フェロノジーは現地観測の間に有意な一致が見られることが示された。そして、2018年~2020年の植生指数時系列を算出し、上述の相対閾値法により、全球植生域におけるGreen up,及びDormancyの推定を行った。 (3) 北半球における植生フェロノジー経年変化と温暖化の関係解明。以前の研究によると、北半球において植生の緑化開始日(VGD)が1980年代から1990年代にかけて大幅に進んでいる傾向があることが報告され、1990年代後半から2010年代初頭の温暖化の休止期間中にこの傾向が停滞したことが報告されている。ただし、AVHRRのデータに関連する品質問題の特定により、このVGD進展の停滞という発見には不確実性がある。今年度で実施した研究では、MODISの高品質衛星データを使用して、VGDは温暖化の休止期間にもかかわらず大幅に進展していることを示した。これは、VGDが気温に非常に敏感であることと、2000年から2021年のVGD進展の大きさが濃縮された温暖化期間の1982年から1999年または1982年から2002年に匹敵することを示しており、春季現象の進展を基にした気候温暖化の推定には注意が必要であることを示唆している。
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