研究課題/領域番号 |
20K12150
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
反町 篤行 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60466050)
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研究分担者 |
松田 和秀 東京農工大学, 農学部, 教授 (50409520)
和田 龍一 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (90566803)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ラドン / トロン / アンモニア / 一酸化窒素 / 森林 / 沈着 / 放出 |
研究実績の概要 |
本研究では、化学的に不活性である放射性ガス(ラドンとトロン)を用いることにより、大気-土壌(林床)間における反応性窒素(アンモニアガスおよびNOX)の放出・拡散・沈着過程の解明するため、東京農工大学FM多摩丘陵研究林施設を利用して、放射性ガスおよび反応性窒素の放出・拡散・沈着に関する推定手法の検討および大気中濃度の測定を行った。 チャンバー法により土壌からのラドン散逸率測定するため、ステンレス製小型チェンバー(6 L)を作製し、ラドン測定器を用いてラドン散逸率の測定手法や散逸したラドン濃度に対する環境条件の影響を検討した。また、大気中ラドン濃度の鉛直プロファイルと土壌からのラドン散逸率を用いて、森林におけるガス交換速度推定手法を開発した。さらに、室内実験によりパッシブ型ラドン測定器とアクティブ型ラドン・トロン測定器の検出下限値の測定およびパッシブ型ラドン測定器に対するトロン干渉の調査を行った。 アンモニアガスでは、デニューダ法による森林での大気中濃度の鉛直分布測定を2020年夏季から開始し、1週間毎に連続して実施した。得られたプロファイルより、ほとんどのケースで、大気から森林へのアンモニアガスの沈着が確認されたが、一部、土壌からのアンモニアガスの放出も確認された。また、チャンバー法による土壌からのアンモニアガスの測定手法を検討した。 一酸化窒素(NO)では、森林での大気中濃度の鉛直分布測定を2020年冬季(約10日間)において行った。2018年夏季観測結果を加えた解析から、夏季における昼間でのNOは、0.1mでの濃度が最も高く、次に30mでの濃度が高かった。NOは樹冠上からの流入と地表面からの放出の2つのソースがあることが分かった。一方、冬季では高度による濃度変化はあまり見られなかった。林床での濃度の季節変動は土壌微生物活性の違いが寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
森林樹冠上部と下部における反応性窒素のガス交換速度の推定や森林樹冠下部における反応性窒素の動態の把握などを行うため、大気中ラドン濃度の鉛直プロファイルと土壌からのラドン散逸率を用いた森林におけるガス交換速度推定手法を開発することに成功した。 森林での大気中アンモニアガス濃度の鉛直分布を2020年夏季から1週間毎に連続してきた。その測定結果から、沈着と放出を持つ双方向が観測され、文献での報告と一致する傾向が得られた。 森林での大気中NO濃度の鉛直分布に関する夏季と冬季観測を行い、特に林床付近において異なる濃度変動であり、興味深い観測結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
森林における放射性ガスと反応性窒素(アンモニアガスとNOx)濃度の鉛直分布および土壌からの放出に関する夏季集中観測を実施し、大気-土壌(林床)間における反応性窒素の放出・拡散・沈着過程の解明のためのデータ収集を行う。また、これまで確認されたアンモニアガスおよびNOの沈着・放出の傾向に対して、大気および土壌における環境条件との相関関係を評価し、それらのメカニズムの理解を目指す。 新型コロナウイルス感染症問題が未だに解決されていないため、いつ不測の事態が起こるのかわからない。そのため、関係者とはメールやオンラインなどにより定期的に連絡を取り合い、その対策を検討しておく。
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