本研究は液滴濃縮法と分離担体(TLC)を融合させた高感度な重金属類の一斉分析法の構築を行う。薄層クロマトグラフィー等に代表される機能性分離担体を用いる分離法は、複数の物質を分離して同時に検出することが可能であるが、使用する試料量が少なく、また、材料表面の変色を検出することから分析感度が低い課題が残されている。一方、液滴濃縮法は短時間で試料中の重金属類を微小な液滴に濃縮することが可能であり、試料中に含まれる重金属類の全量を担体に導入することが可能となる。そのため、液滴濃縮法と機能性分離材料を融合することで、超高感度重金属類の一斉分析が可能となる。また、国内外において構築した分析手法を現場での水質の分析法に用いて、オンサイト分析法としての分析性能を評価する。 その結果、高倍率濃縮による液滴濃縮法によって、感度の上昇は確認できたもののTLC上での検出の際に著しい感度の低下が見られ、基準値レベルの重金属類の検出が困難となることが分かった。そのため、感度の損失を補うべく固相抽出との融合によるカスケード型の濃縮を検討することで、TLC上でも十分な感度を有することを明らかにすることができた。一方、固相抽出を組み込むことで操作項目が増えることから簡易性における課題が明らかとなり、今後は簡易性を有しつつより高い濃縮倍率を有する手法の開発を計画している。また、今回の研究の過程でこの液滴濃縮法が水溶性が低いジチゾン錯体の抽出率が高いことに着目し、溶液とならない微粒子状の物質の濃縮への可能性を有することを着想し、極微小サイズの微粒子状のマイクロプラスチックも高効率で濃縮できることを予備的に確認することができたため、今後、本濃縮法の幅広い応用性を検討していきたいと考えている。
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